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2010.01.03 (Sun)

虫と歌 市川春子作品集


虫と歌 市川春子作品集
(2009/11/20)
市川春子

人の形、人の声、人の心。
その全てをもっていても、
彼らは人ではない。

それでも人と暮らし、
人とは違う命を生きる。
彼らを生んだ人々に、
恨み事の一つも言わずに。


【More・・・】

人種が違うといくら言ったって、
足が二本以上だったり、翅で飛んだりするわけじゃない。
逆に虫や鳥、爬虫類と大きくくっても、
彼らはとてつもなくかけ離れていることもある。
特に虫の場合は、それこそ足の数も翅の有無もそろわない。
植物にしたって、色形大きさ生殖の方法まで、
異なる部分が多すぎて、典型なんて存在しない。
そう考えると、獣と呼ばれるものは小さな集団な気がする。
だから、人との融合も想像に難くない。
そもそも人は彼らの一つなわけだし。
でもここで描かれるのは、本当の異種混交。
人と草、人と虫、人と自然、人と星。
あまりに離れた彼らの結合は、おぞましく、悲しいと思った。

「星の恋人」「ヴァイオライト」「日下兄妹」「虫と歌」
四篇はどれも現実離れしている。
虫人間を育てたり、部品から生まれた妹と図書館に行ったり。
そういうこともかなり妙な事態ではあるけれど、
そうでなくても、なんだか主人公たちと世界が分離しているような。
たとえば「星の恋人」では、おじさんの家が、
「日下兄妹」では、日下くんの家と図書館が、
なんだか一つの閉じた世界のようになっている気がした。
「虫と歌」は学校と歌の将来という窓があるけれど、
やっぱりそこと、あの家は隔てられている。
だからこそ、彼らはその中で起きる「妙なこと」を、
当たり前に受け入れられるのかもしれないなと思った。
そこ以外に世界がないのなら、受け入れるしかない。

閉じた世界の中で、彼らは混じっていく。
というより、混じっているから、閉じているのか。
どちらにしろ、ある者虫と、ある者は草と混じる。
あるいは混じったものと共に暮らしている。
料理洗濯したり、バイオリンを弾いたり、仕事したり。
普通に暮らす。とてつもなく平和な光景だと思う。
でも読んでいる自分は、それが終わるときを予感してしまう。
彼ら自身が壊すか、それとも外から壊されるか。
それは分からないけれど、
アンバランスな命で構成された世界が、ずっと保てるわけはないと思う。
そう思うのは、人の形をした人ではない彼らに対して、
おそらく自分がどうしても違和感をもってしまうからなんでしょう。
「同じ」命でも、混じってはならないものがあると、そう思うから。
そう思う限り、自分はあの世界の一員になれない。
結局自分は、同じになれないこと、仲間はずれが嫌なだけなのかも。
よく分からないな。

終わりは、やはり訪れる。
でも、結局世界は崩壊しなかったような気がした。
命が失われたり、今まで通りではなくなったりは確かにするけれど、
世界は壊れず、新しい形に変化して持続する。
人だけから構成される世界なら、
こんな風な終わり方はないだろうなと思う。
虫も草も、星も自然も、人なんかよりずっとしぶといらしい。
しぶとい者たちと生活するうちに、
人である者たちもたくましくなっていくのが嬉しかった。
特に日下くんの新しい世界は、眩しい。
妹だけを選ぼうとした日下くんだけれど、
その妹はお兄ちゃんのことを彼自身より理解していたのだと思う。
助けてくれたお礼に、にしては、鶴や猫より全く出来た妹で。

昆虫の細胞が交換されないなんて、
知っていれば小さな頃にあんな非道はしなかったのに。
なんて、遅すぎる上に、そんなこともない気がするけれど。

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