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2010.02.07 (Sun)

間の楔


間の楔1
(1990/9)
吉原理恵子

二十歳であることが、
いつ生活や絆を失うか分からないくらいに、
致命的なことだという共通認識。
それがその街の常識だとしても、
あまりに悲しいことだと思う。

幸か不幸か、
ブロンドのエリート様には無関係だったようだけれど。



【More・・・】

人間らしさとか言われるものは、
どこに宿るものなのか、とか、
読後、自分でも意外なところに思考が吹っ飛びました。
どうしてそんなところへ行くのかと考えるに、
地球人としての人間が一人も出てこないこと以上に、
それにも関わらず誰もが人間臭いから、かもしれません。
スラムに生きる若者たちの無鉄砲でそのくせ擦り切れたようなところは、
まわに若者のそれのように思えて、
キリエの仕方なさなんか、愛おしく思えてくる。
都市の内部に住むエリートたちも、
彼らが自嘲し、周囲が思うほどには冷たくないように見える。
イアソンなんか、それでよくブロンドをやっていられる、と思うくらい。
まあ、それだけリキが特別だったってことかもしれませんが。

最近文庫で新しく出てるらしいですが、
ハードカバーの古い方の表紙は、SFな感じで大変手に取りやすい。
内容的には初っ端からリキが哀れなことになってるのは置いておくとして。
中心都市とその衛星都市、スラムの関係性や歴史、
あちこちで出てくる近未来な光景は、SFそのもの。
ただ街の成り立ちや裏社会の仕組みは詳細な割に、
日常で人々が使っているらしい技術は説明が少ないので、
当たり前にエア・カーに乗り込んだりされるとたまにぎょっとしますが。
それにしても技術と言えば、ペットにつける輪っか、多機能だなあ。
ソレがずっと付けっ放しだってことに、
イアソンがかなり終盤にひどい使い方をして初めて気づいたという…。
えげつない商品を生産する技術やガーデンの裏の顔のことも考えると、
工学・情報分野の技術もさつことながら、
遺伝子操作や成生体改造の技術もかなりのものなようです。
なんでそこが伸びたのか、を考えると、
ユピテルを中心にした都市の異様な在り方がチラついて暗い気分になりますが。

コンピュータ主導の都市とその恥部のような歓楽都市、
その更に外に位置するスラム、という構成は、
どこかで見覚えがあるなあと思っていたら、
「№6」のシリーズが似た感じなのを思い出しました。
スラム育ちの雑種であることを他人から蔑まれ、自分でも嗤うリキは、
少しばかりかのシリーズのネズミに似ているかも。
だから、リキがあからさまに乱れる度にどぎまぎするのか。
…と、ぼやけさせるのはやめにして、
リキを見ていると、なんだかものすごく既視感があるのは、
多分自分が上杉さんとこの影虎さんを思い出すせいです、はい。
あのはねっ返り具合といい、イアソンに対する遠慮なさといい…。
キリエのオッドアイですら、ダブってしまう辺り、
どうしようもないなあと、自分でも思いますが。

それにしても、
シリーズで何冊も出ていることを知った上で一冊目を読んだんですが、
この終わり方でどうやって続いていくんでしょう。
あの状況で万が一二人がカムバックしたとして、
片方はある意味被害者な幼馴染に大変なことされてるし、
片方はどう考えても五体満足じゃないし。
雑種のペットに執心しただけで立場が危うくなるなら、
体を損なった上に、都市の重要施設まで粉砕したとあっては、
ブロンドのエリートとしてはもう終わりな気がするんですが。
それとも脳だけは人間というのなら、体は交換可能なのか。
新版の表紙を見る限り、主人公を代えて、ということもなさそうだしなあ。
その辺りが気になる以上に、
ナチュラルに二人を気に入ってしまったので、
先に進んでみることにします。

キリエのしたことは確かにひどいけれども、
もう少しリキでもエリートの誰かでもいいから、
あの仕方ない少年に優しくしてやればいいのに、と思いました。
悲しくて甘い夢に溺れながら微笑むなんて、あまりに痛々しい。
まあ、そういう自分も彼を捕まえたカッツェが一番好きだったりするんですが。


追記。
新しい文庫版の方はサイドストーリーや修正を加えたもので、
大筋はこのハードカバー一冊に収められているようなので、
とりあえずは様子見ということにしておきます。


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