2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2010.02.21 (Sun)

いわずにおれない


いわずにおれない
(2005/12)
まどみちお

昔々、
アリを食べたことがあります。
地面をせっせと歩く姿が、
なんだかゴマのようでおいしそうで、
つまんでぱくりとやってしまいました。

まどさん、
はだかのいのちは塩味でした。


【More・・・】

まど・みちおさんといえば、
小学校低学年の頃に配布された詩集でよく見かけた人という印象で、
あの「ぞうさん」や「やぎさん ゆうびん」を書いた人だとも、
恥ずかしながら知らなかった。
初めて詩集を出したのが五十を大きく越えてから、といっても
もう詩人として書き続けて四十年以上になるのだから、
なんとも頭の下がる話だと思う。
インダビューから起こした語りと、
話の中に挙がった詩を収めた一冊を通して読んでみると、
詩人、といより、まどさんが見ている世界、
そのほんの一端か、手触りのようなものを見られた気がする。
そんな簡単にのぞきこんだなんて思われちゃあ、
書く人としてお怒りになるかもしれないなあ。
それともわずかながら伝わったことを喜んで下さるか。

収められている詩は、
かの詩集で目にしたようなものから、
この本のために書かれた最新作まで、
書かれた年代も書かれたものごとも様々。
簡潔な言葉とほとんどひらがなだけで構成されているので、
読めないということや、言葉の意味をつかめない、ということは多分ない。
でも、さっきと矛盾するけれど、
繰り返し読んでも読んでも、結局まどさんの見ているものには、
どうしても自分などでは追いつかけていない気がして、
なんだか悲しくなる。
クモの巣にかかった蚊と星が同じ大きさに見えたときのふるえを、
必死に想像してみるけれど、
精々がそれを見て遠くに想いを馳せるまどさんの後ろ姿を思い描く程度。
幸いなことにインタビューの中で
「どう読んでも自由だけれど、読まれたがっている形はある」
というようなこと言って、若干解説があるので、
そのまま生の詩だけを読むよりは、
まだ像を結びやすかったようにも思いますが。

世界全体を愛するとか、慈しむということは、
言うまでもなく、とても困難なのだと思う。
世界に含まれる要素はそれはそれは多い。
一つのものを愛するだけでもままならないのに、
嫌なものも胸のむかつくものも含んだ全部、なんて
仏か聖人でもなければ不可能なんでしょう。
まどさんも多分それをしている訳じゃないし、
すべきとか思っている訳でも、おそらくはない。
ただ、思う前の段階で、まどさんには、
そういう忌むべきもの、嫌悪すべきもの自体が、
人よりとても少ないんじゃないという気がした。
人より、なんて言ってはまた詩人にしかめ面されそうだけれど。
この人には無理して慈しもうとする必要なんかさらさらなく、
多くのものが愛おしいものとして目に映っている、というような感触。
その目をもつことを羨んでしまう自分など、
全くもって問題外だなと思う。

「おはながながいのね」と言われて、
「そうよ かあさんもながいのよ」と返す。
何なんだろうこの問答は、とか思いながら歌っていた覚えがありますが、
まどさんも想いを聞いて、とても得心がいった。
これは多分「お前のかあちゃんでべそ」と言われて、
怒ったり泣いたりする子どもの気持ちと同じなんでしょう。
母親の鼻が長かろうが、でべそだろうが、
子ども本人にはどうでもいいこと、と思えるのは、
もう子どもじゃない人だけなのかもしれない。
子どもにとって、母親を愚弄されることや賞讃されることは、
ほとんど直に自分に繋がっている。
彼女が母親であるというそれだけの理由で。
母に似ている自分が誇らしいと同時に、愚弄はそのまま自分に重なる。
象の子は、母に似た自分の長い鼻が誇らしくてしょうがない。
という歌なのだと思って歌えば、
なんだか嬉しく鼻をぶんぶん振り回す子象の姿が見えるようで、
変なもんだなあとつくづく思ったりする。

長く生きた分だけ驕ったりする人もいるだろうに、
ますます腰の低くなる詩人の姿は、
まさに実るほど…な稲穂な気がした。


スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


07:52  |  ま行その他  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/129-c10c697d

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |