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2010.02.24 (Wed)

江戸の怪奇譚 人はこんなにも恐ろしい


江戸の怪奇譚 人はこんなにも恐ろしい
(2005/12)
氏家幹人

怪しい恐ろしい気味が悪い嫌だ。
だから、登場願おう。
怪しのものに、人ならざるものに。

人でないならば、成敗できるから。
人でないならば、諦められるから。

そう思うのは人に他ならない。

【More・・・】

どれだけ奇っ怪な話だろうと、
それを語り伝えるのは人なわけで、
人不在の怪談なんぞ存在するわけもない。
ということで、怪しげな化け物やら狐狸の類の後ろの覗き込み、
そこにいるはずの人ヒトひとに焦点を当てよう、という趣向らしい。
取り上げているのは、河童や天狗のポピュラーな奴らから、
嫉妬やイジメといった、怪しのものというより、
人の情念が直に表に出ているものまで。
基本的に「江戸」の怪奇譚なので、
江戸という時代、都市の外側を舞台にしたものは省いてまして、
何もそこまで江戸にこだわらなくても、と若干思ったり。
時代を統一するのはいいとして、
都市と地方の村々で同じ「怪談」の語り口を比較すれば、
広い意味で江戸の「人」を捉えられるんじゃ…、
などと偉そうなこと「学術書」に向けて言いたくなりました。

神隠しの背後に人身売買があったという話は、
どこぞで耳にしたことがありますが、
労働者確保のために、藩ぐるみで子ども数十人を拉致した事件は初耳。
ただ、そこまでくるともう神隠しじゃないような気も。
大規模すぎるし、神や天狗たるはずの攫い手がぬかって露見しては、
犯罪としか言いようがなく、怪異の現れる隙間はない。
怪異が怪異になるためには、
背後にうごめく人は決して姿も影さえも見せてはいけないんだと思う。
見えない部分に、怪しのモノは生まれるはずで、
生むのはもちろん人だけれど、
たとえ背後に人がいることに気づいていても、
人にとってそれが生まれる必要があるからこそ、
化け物であれ神であれ、奇々怪々のものがいてくれる。
怪談でも怪奇譚でもいいですが、
人ならざるものに冤罪を着せきれないんじゃあ、
怪しの話とは呼べないんじゃないかと思った。

それはそうとして、忽然と人が消える神隠し。
そのまま戻ってこなかったり、あるいは数年してふいに現れたり。
その手の話は江戸以前も以後もわりとよくあるんでしょう。
戻ってこない場合は拐されて、売られたか殺されたか、
そうでなければ、現在の言葉でいう「蒸発」か。
実際そういうことを隠すために、
加害者・被害者の両方が神や天狗を引っ張り出してくることもあると思う。
ただ、「戻ってきた」というのは、
一体どういう事態を背後に隠しているのかちょっと考えてみると、
まずは、家出や駆け落ち後に本人が自ら戻ったという場合。
あとは、いなくなったということ自体が誤りで、
病や何らかの理由で家族が隠していた、隔離していた、という場合。
何にしろ、人がいなくなる、という基本的(?)な怪異は、
目の前で天狗に横っ腹抱えられて連れ去られでもしない限り、
「いない」という事柄が怪異になっている、不可視の怪異なわけで、
その分背後の人影は透けやすいのかもしれないなと思う。
それでも神隠しという怪異が成立するあたりに、
怪異の筆頭格たる、らしさみたいなものがあるんだろうけれど。

とまあ、神隠し一つとっても、
背後でうごめく人の有り様は色々考えられるわけで。
怪異の背後に目を凝らし、ときには覗き込むのは、
とても面白いし、興味をそそられるんですが、
もう少し色んな可能性を提示してくれるか、
でなければ、一つの原因というか大元を思いきって特定してくれた方が、
分かりやすいし面白かったような気がします。
闇があるからこそ、怪しのモノが生み出される構造を前提にするなら、
「真相は闇の中」とか、怪しの話をする以上、
当たり前なんじゃないか、とか自分なんぞは思うんですが。
それからもう一つ気になったのは、
心の闇という言葉が一度ならず使われること。
江戸のような薄闇の都市は時代とともに消えても、
人の心の中には、日の当らない場所がなくならないのも当然で、
それをどうにか見ようとしたり、見えたことにしなくては、
何を理解するのも無理なように思います。
何でもかんでも心の闇とかいうブラックボックスに投げ込まれては、
話が滞るどころか、明後日へ進んでしまう気がした。

江戸時代、嫉妬が妻の最大の悪徳なら、
夫の悪徳の最たるものは何だったんだろう、と
何の主張もなく気になった。


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