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2010.03.17 (Wed)

平成トム・ソーヤー


平成トム・ソーヤー
(1998/2)
原田宗典

助言には二種類あるらしい。
過去の人間の失敗を糧に二の舞を防ぐものと
助言したところで意味をなさないもの。

ちさと婆ちゃんのため息が胸に沁みる。


【More・・・】

健全な青少年のすべきことが、
勉学と部活動と「純粋な」異性交際だとしたら、
おそらくこの国、どころか人類の危機だと思いますが、
少なくとも入試問題を掏って大学へ入る、なんて
勧められたことじゃあないでしょう。
しかも怖い人たちにケンカを売るような形で。
実行メンバーは理系科目のみの天才・スウガク。
ゲームオタクで若干卑屈なスリ高校生・ノムラノブオ。
大人・子ども両方の顔で人を繋ぐ少女・キクチ。
そして神の如き手をもつホテル経営者・ちさと婆ちゃん。
不健全極まりない発想で始まったその「仕事」は、
(他人の財布からの)お金と命を賭けて転がっていく。
なんだか応援できないのは、
不健全だから、という理由だけではない気がした。

計画の発案者は女の舌を噛み切ったという噂をもつスウガク。
序盤は底の見えないマッドな少年か思いきや、
中盤から終盤にかけて、
突如熱い気持ちとチキンハートをもった当たり前の高校生に。
印象が変化したり、性格そのものが変わるのはいいんですが、
途中の経過がいまいち読みとれず、
というより、元々この少年がどこを向いているのか分からず、
ただ、最終盤でオロオロしたり、バンダナ巻いたりするスウガクが、
ノムラノブオを見守るちさと婆ちゃん的視点で可愛く見えた。
一見秘密主義で常に見下してくるイヤな奴のようで、
この人はただ気の回し方が人とずれてるだけの、
当たり前に浅はかで億秒な若者なのかもしれない。
最初に登場したときの威圧的な調子も、
そう思えば微笑ましいような気もしなくもない。

話は若きスリ太郎・ノムラノブオ視点で進むので、
この男が一応主人公なんだろうとは思いますが、
ちさと婆ちゃんのキャラクターを大好きになり、
スウガクのガキ臭さやキクチの愛嬌を気に入っても、
このノムラノブオだけはどうにも頂けない。
「…すよ」という喋り方といい、
卑屈なようで自身過剰な態度といい、
事態を悪化させる無鉄砲さも、堪え性のなさも、
キクチや母親に対する態度、将来に対する浅はかな絶望…。
枚挙に暇がないくらい気に入らないところを挙げられるというのも、
珍しいというか、凄いというか。
まあ、倫理にもとるとか、法律に触れるとかいうことはないので、
要は自分の好みの問題なんだろうなとは思うんですが。
それにしてもこの男は仲間に引き入れたスウガクも、
初めての人に選んだキクチの気持ちもよく分からないなあ。
心配する婆ちゃんの気持ちはよく分かるけれど。

高校生三人とお婆ちゃんの計画の行き着く春は、
全くもって幸福なものじゃない。
情景だけ見れば美しいものは確かにある。
上手くいった分といかなかった分を合わせて、
少年少女は不健全な計画の中で健全に成長したのだとも思う。
でも、人が死んでいる。
死ななくてもよかったはずの人が、
その愚かしい計画の中で、彼らの成長と引き換えに。
それだけではなく、間接的とはいえ足を失った者がいて、
自ら命を絶った者、監獄へ放り込まれた者もいる。
金儲けの手段を考えたり、それに寄りかかった人々について言えば
自業自得と言えばそうなんですが、
傷とつり合うだけのものがその春にあったようには思えない。

清廉潔白であれとも、責任を取れとも言わないけれど、
振り上げた手を下す場所の見極めだけは、
若者はお婆ちゃんにしっかりと習ってほしいものだと思う。

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