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2010.04.10 (Sat)

木曜日だった男 一つの悪夢


木曜日だった男 一つの悪夢
(2008/05/13)
チェスタトン

表の裏の裏は、表。
ひっくり返せば、
本当は嘘に、嘘は本当に。

悪夢の正体は、
嘘の裏の、裏の裏にある。
かもしれない。

【More・・・】

秘密結社、なんて
今では冗談のような言葉な気がしますが、
サイムの目を通して見ると、
無政府主義中央評議会の怪しさは、
冗談には思えなくなった。
各曜日の男たちはそれぞれ違った不気味さで
サイムと追いかけっこを繰り広げる。
ただ、一章と二章でのサイムとグレゴリーの問答のような、
「真剣さ」もそれほど感じない。
その訳は物語全体の仕掛けのせいだけでなく、
やはりどこか作り物じみた舞台のせいなのかも。
銃火器の道や辻馬車の暴走、はては気球に象に仮面舞踏会。
モノは違えど、まるでアリスの世界のよう。
ああ、だからこれは「悪夢」なのか。

サイムが引きこまれた悪の組織「無政府主義中央評議会」。
有体に言ってしまえば、
全ての権力に反逆するテロリスト集団。
木曜を選出する会議の席や七曜の集会で交わされる会話は、
確かに過激で、実行したならお縄ものだと思うけれど、
彼らの恐ろしさは、そこにはない気がした。
何しろ一番怖い場面は、爆弾魔や日曜日の語りではなく、
十一章から十二章にかけての逃亡劇。
エンデの「モモ」の灰色の男たちのような、
黒い集団が丘や街を飲み込むように追ってくる。
今しがた逃亡に協力してくれた善人たちが、
振り向けば拳銃や斧を手にして向かってくる。
何より恐ろしいのは彼らに教義がないことかもしれない。
まるで病のように、黒い集団の無意識は感染する。
これは、怖い。こんな夢など見たくない。
と思う分、その裏側に隠された実際には、
笑いがこみ上げるのだけれど。

全体としては、しつこいくらいのテンドン話で、
これだけ繰り返されれば、飽きるか察すると思うんですが、
なぜかそうはならない。毎回驚く。
そうなる訳の一つは、
二度書いたことを三度も四度もやるわけないという思い込みでしょうが、
それより何より、書き方のうまさがあると思う。
仕組みだけ見れば確かにテンドンで、
どれもこれも単純な勘違いと思い込みで成り立っている。
でも、金土水月日それぞれとの対決は、
まさか背後に同じ実態が隠されているとは思われないほど、
緊迫しているし、違う種類の恐怖を抱かせる。
特に土曜日との対決は、
素顔のブル博士のキャラクターも相まって、素晴らしい。
最初の評議会と日曜日の追跡劇との落差が楽しかった。

七曜それぞれが面白い素顔を持っていて、
洒落っ気の効いた会話も楽しい。
主人公たるサイムが詩人だからなのか、
たまに観念的というか、抒情的というか、
そんなことをうだうだ言ってる場合じゃないだろっと
思わず突っ込みたい気分にもなりますが。
しかし結局サイムは何でもできる男だったなあ。
行動力と発想力と、それから剣の腕もなかなか。
難点と言えば、熱くなって周りが見えなくなることくらい。
まあ、そんな主人公も魅力的でしたが、
やはり一番はブル博士かと。
人の悪そうな笑いといい、
それにそぐわない子どものような楽天さといい、良いなあ。
大佐の人の良さにも笑わせられましたが。

恐怖と緊迫と笑いのミックス感が大変楽しい、
かわいい男たちのドタバタ劇でした。

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