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2010.04.28 (Wed)

バッド・モンキーズ


バッド・モンキーズ
(2009/10)
マット ラフ

悪い猿を退治すれば、
世界はより良くなる。

そんな簡単な図式の中に、
白と黒と数多の灰色を挟みこんだ物語。

【More・・・】

アメリカっぽいという感想を、
特に映画を見た後なんかに安易に使ってしまうけれど、
その内訳を考えると、
火器による勧善懲悪が中心にあるような気がする。
善と悪の間にまっすぐではっきりとした線を引き、
悪の側を問答無用で殲滅する。
そういう風にアメリカっぽさを定義するなら、
この物語は、その典型とも言えるし、
その真逆でもあるのかもしれない。
ジャンクフードだと思ってかじってみたら、
有機野菜と禁忌の肉の合わせ技だったような。
何を飲み下したにしろ、口の中に残ったものは、
やみつきになる苦さでした。

ごくごく小さな頃に憧れたヒーロー番組のように、
物語の世界には、善と悪、二つの組織が存在する。
一方はより良い世界を、一方は混沌の世界を目指して、
互いに騙し合い、せめぎ合っている。
と、白い部屋で医者と向き合う女・ジェインは語る。
ジェインの属す善の組織の任務の中で、
彼女は「殺してはいけない人」を殺してしまったために、
自由を奪われ、警察の御厄介になっている、とか。
ここからジェインの半生と、
彼女の任務の詳細が語られていく。
けれど、それはどんどん現実離れしていって、
彼女がどうやら重度の薬物中毒者であることが分かってくれば、
オチは自ずと見えてしまう。
と、思って読み進めていくと、やられます。
というか、やられました。二重にも三重にも。
たび重なる反転に、目が回りそうになった。

ジェインの人生は、
ぶっ飛んでいるようでいて、実はそうでもない。
母親から拒絶されたことや、
殺人鬼に追い詰められたことを除けば、
組織に勧誘されるまでの二十年間、
彼女はごくありきたりな女性だったはず。
当たり前に大人で、自堕落で、人生を諦めていた。
薬に溺れ、倫理をなだめすかして生きる姿は、悲しい。
けれど、それよりも痛々しかったのは、
組織に属してから、過去を振り返ったとき、
彼女自身がそんな自分を嗤うこと。
「無謀」で「愚か」で「ブス」でどうしようもない女だった、と。
ジェインはそんな言葉で過去の自分を貶めることで、
善なる世界のために戦う自分を、
肯定しようと、特別だと信じようとしているのかもしれない。
「悪と戦う」という言葉の甘さが、
普通の人生をこんなにも醜く見せてしてしまうことが恐ろしかった。

善なる組織も、悪の軍団も、
目指す世界のための障壁になるのならば、
人殺しをするのにためらわない。
まあ、一応善の方ではそれは最後の選択のようだけれど。
現実と幻覚の間を疾走するジェインもまた、
結構な人数の命を奪っていく。
それが彼女にとってどんな意味をもつのかは、
中盤から終盤にかけて、幾度もひっくり返るけれど、
最後の数ページの対話を読むと、
彼女がそういう風に在ることは、
彼女自身にもどうしようもないことだったのではないかと思った。
善と悪の間に明確な線引きがあるとは思わないし、
悪だから殺すという理屈にも頷けないけれど、
それと同じように、善だから尊いわけでもないのだと思う。
「いいんだよ」と笑うジェインの立つ場所は、
どこに在ったのだろう。

映画化するそうで、
日本でも公開することを期待しておきます。

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