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2010.05.01 (Sat)

オオカミ族の少年


オオカミ族の少年
(2005/06/23)
ミシェル ペイヴァー

一人で生きるのは、難しい。
孤独とかなんとか、
そんなものは二の次にして、
とにかく、今夜の寝場所を見つけなくては。
明日からの食べ物のことを考えなくては。

十二歳。
トラクはたくましい。


【More・・・】

最低限の衣服以外を剥がれて、
ポイっと原始の森に放り出されたら、
自分はどれくらい生きられるだろうと思った。
狩りはおろか、森の歩き方さえ知らない。
とても生きてはいけないと思う。
そう考えれば、トラクのたくましさに、
何か憧れのようなものを感じてしまった。
父親を失い、十二歳で森に一人になって、
まだ何も知らない、と言いながらも、
トラクは森の声を聞く方法を知っている。
なんとか一人でシカを狩って解体できるし、
寝場所を作ったり、傷の手当てもできる。
とんだ一人でできるもん、だなあ。

六千年の昔なんて時代は、
もはや異世界、かと思いきや、
意外とそんな風にも見えなくて、
森と生きる人々に親近感さえ覚えた。
家族がいて、団欒がある。
確執があって、和解がある。
石器と動物の皮に囲まれた生活になじみがなくても、
夜の食事の安心感や、朝もやの冷たさは知っている。
ことある毎に唸ることなんかに驚きつつも、
この人たちは異形のモノではなく、
確かに人間なんだなと思った。

父親との誓いを果たすため、
トラクは旅の生活に入るわけですが、
ときどき入る相棒の狼、ウルフの視点が、
妙にトラクとズレていて、微笑ましかった。
ウルフの思う所の「背高尻尾なし」のトラクが、
確かにかわいそうな生き物に見えてくる。
毛皮ももたず、鼻と耳はほとんど役に立たず、
阿呆のように一度に長く眠る。
おまけに足は遅いわ、言葉は不自由だわ…。
それでもウルフにとって、トラクは「兄貴」。
群れのリーダーなのだという認識に、
狼という生き物の性質を見たような気がする。
ウルフの視点で旅を見て初めて、
ウルフが番犬や便利な道案内ではないのだと分かる。
とはいえ、別れの場面には、
どうしても感傷を抱かざるを得なかったけれど。

森全体の敵であり、仇でもあるクマを滅ぼして、
一応トラクの旅はひと段落しましたが、
これは全六巻の一冊目なので、
まだまだ物語は続くようです。
できればウルフにはずっと相棒として居て欲しかったですが、
人とオオカミの違いをはっきり知ってしまっては、
そうもいかないのも、そういうものかと思ったり。
どうやら本当に立ち向かうべきは、
おぞましい悪霊を呼び出した人間のようで、
物語が人対人になって、
どろどろしなければいいなと思います。
まあ、彼らの生活の様子を見ているだけでも十分面白いので、
この先も追いかけていくことにはしますが。
その内に、ウルフとも再会するかもしれないし。
いい狼になっていることを期待しておこう。

たくさんの族があるようですが、
まだワタリガラス族くらいしかはっきりしないので、
この先もっと色々出てくるといい。
イッカク族とか、とても気になります…。



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