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2010.05.04 (Tue)

クールス


クールス
(2005/2)
高橋美夕紀

「夫婦」や「家族」
それから、「恋人」。
それぞれになるために必要なものは、
細々と結構多いような気がする。

でも「仲間」になるために要るものは、
それよりもっとずっと少ないのかもしれない。
そして一度なってしまえば、
百万馬力も夢じゃない。


【More・・・】

初めてソフトボールを握ったとき、
単純にでかいと思った。
そして、それが顔面に当たったとき、
サエとほぼ同じ感想を抱いた。
一体これのどこがソフトなんだ、と。
普段ソフトボールの試合を見る機会はないけれど、
オリンピックなんかでたまに目にすると、
彼女たちのたくましさに毎度感服する。
あの大きくて堅いボールを、
投げ、打ち、捕る。そして、走る走る。
厳しい部活一位といえば、
野球部が相場かと思いますが、
きっとソフトも同じなんでしょう。
汗と泥にまみれるサエたちを見ていて、
そんなことを思った。

生涯ただ一人だけの女性を愛する、なんて、
最近のドラマでは聞けそうもない言葉ながら、
クールスのメンバーがそれを胸に刻む姿に、
なんだかしみるようにグラグラきた。
物語の終盤でサエが言うように、
「この世でただ一人の存在であるあなたを」という意味も、
同時にそこに見るのだとしたら、
クールスの面々がそれぞれに抱えているものが、
とても愛おしいような気さえした。
少年少女であった時代は遠くても、
お天道様の下で走り回って笑い合う彼女たちは、
まぎれもない青春の中にいるように見えた。

物語の序盤、
新しい世界と自分自身を知って、
語り手のサエが手放しで幸福に浸る様に、
どこか苛々してしまった原因には、
おそらく、彼女に対する嫉妬もある気がする。
サエは幸運な人だと思う。
自分自身を発見することも、パートナーを得ることも、
人によっては、傷だらけになるようなことなのに、
ほとんど何の障壁もなく、彼女はそれを手に入れる。
機会に恵まれ、人に恵まれている。
という風に見てしまう自分が、たまらなく嫌になった。
あの人は恵まれている、なんて視点を、
物語の中の人物に向けるなんて、もう目も当てられない…。
クールスのメンバーなら誰ひとりとして、
そんなことはしないだろうなと思う。
他人の幸福に、躊躇なくおめでとうを言える彼らは凄い。

試合のときにマサキのことが問題になって、
チーム内がぎくしゃくしたときの、
マサキの身の処し方が悲しくて仕方なかった。
選択の余地のない在り方なのに、
そのまま立てる場所がスポーツの場所にさえないなんて。
「ここも」というマサキの言葉に、
この若者はこれまでどれだけの傷を負ってきたんだろうと思う。
数の上で少ないがゆえに、必死に身を寄せ合っても、
その中でさえ、理解し合えない。
いつも多数派の側にいる人間なんていない以上、
それは誰にとっても切実な悲しみなのかもしれない。
合宿の夜、「ウシシ」と笑うマサキが、
そんな風に笑える場所がもっとあってほしいと思った。

白球を追いかける青春の終わりは、
やはり少しばかり寂しかったけれど、
坊主頭の少年たちと同じように、
彼女たちにもその後の未来が在ることが嬉しかった。

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