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2010.05.19 (Wed)

妖怪アパートの幽雅な日常①


妖怪アパートの幽雅な日常1
(2008/10/15)
香月日輪

外見も性質も、
存在の在り方そのものも
何もかも違う住人たち。

それでも、食卓を囲む。
語り合う。慈しみ合う。

美味しいご飯は最強だと思う。


【More・・・】

引っ越し先に人ならぬものが…。
という話と聞いて最初に思いつくのは、
「となりのトトロ」な人間です。
あるいは「肩甲骨は翼の名残り」とか。
どちらにしろ、そこに住まうモノたちは、
序盤は気配や影だけで、少しずつ姿を現すもの。
そういう流れが王道としてあるとすれば、
妖怪アパートはタガが外れているというか、
開けっぴろげというか。
あんまり普通に食卓を囲んだり、
挨拶を交わしたりするので、
人でないことに気づくのに時間がかかるとか、
どれだけ人にに馴染んでるんだ、こいつら…。
いちいち驚く夕士の方が変に見えるくらい。
苦学生・夕士少年の新生活は彼らに慣れることから始まる。

人間の住人わずか三人ながら、
寿荘の中はなんとも活気に満ちている。
「誰か」が毎朝ゆり起してくれるし、
食卓は朝も晩もにぎやか。
何より、夕士たちの食べる飯が美味しそうで、
がつがつ食べる少年とそれより食べる少女を見ていると、
生活の匂いがするようで、それだけで豊かな気分になる。
クリとシロはかわいいし、大家さんは親切だし、
るり子さんの飯は上手い、人もそれ以外も気が良い。
人でないものを受け入れれさえすれば、
このアパート言うことなしだなあと思った。
苦学生の身分から仕方なくやってきた夕士も、
ちょっとどうかと思うくらい、
すぐにここの住人と生活に馴染んでいく。
さりげなく霊的な才能まで開花させてるし。
縁側で喋ったり、本を読んだりする夕士が、
単純に羨ましくなった。

とはいえ、人でないモノの中には、
人だったもの、も混じっていて、
彼らがそこにいる背景として、当然死がある。
可愛いクリにも、手首だけのるり子さんにも。
語られはしないけれど、掃除を続ける鈴木さんにも。
人に生まれたかったという佐藤さんの言葉も沁みるけれど、
人だった彼らの死の先の今を思うと、
やはりどうにもやるせなくなってしまった。
るり子さんの恥じらいや、
茜さんにすがるクリの無表情の喜びが、
なんだか痛々しく見える。
砂漠の中のオアシス的場所らしい寿荘で、
彼らが今に満足して「生きて」いることは、
死を前提にする以上悲しいけれど、
幸運なことでもあるんだろうなと思う。
夕士はクリの母親に憤りと悲しみを見ているけれど、
ああなってしまう者の方がきっと多い。
だからこそ、結界に阻まれる彼女が哀れで仕方なかった。

中学生で両親を失って、
アルバイトをしながら高校に通う夕士は、
やさぐれる暇もないくらい生きることに必死に見える。
現実の社会に挑みかかるようなそんな少年が、
人でないもの、もはや命のないもの、
そして、浮世離れした人々と生活を共にして、
だんだんと肩の力を抜いて、
子供らしくといか、人間らしくなっていきことが、
保護者のような心境で、嬉しかった。
えせ不良の同級生に啖呵を切る姿なんかは、
たくましくさえ見えた。
長谷という友人、親戚との和解、
そして正式な住人になった寿荘の仲間。
彼自身は不安だろうけれど、
少年の行く末は明るいような気がした。

まだまだ続くシリーズ。
人ならぬ住人の背景やら、
開眼しちゃった夕士少年のその後やら、楽しみです。



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