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2010.07.04 (Sun)

僕とおじいちゃんと魔法の塔(1)


僕とおじいちゃんと魔法の塔1
(2010/1/23)
香月日輪

親子であっても、
同じ世界には生きられない。
悲しいくらいはっきりとした断絶が、
親と子を隔てていく。

でも、同じ世界に生きられなくても、
親子はやはり親子なんだと思う。

おじいちゃんも親父さんも、
きっと龍神も、それを知っている。

【More・・・】

秘密基地への渇望は、
今でもガキんちょにあるんだろうか、とか
すっかりスレたことを思ってしましたが、
龍神やその友人を見るに、
どうやらガキはガキのままなようで、
なんだか安心しました。
思えば、秘密基地なんてものは今でも欲しいし、
自分だけの書斎やら、私的な(狭い)空間やらは、
いつまでも魅力的なものなのかも。
でも、「秘密基地」。
秘密で、しかも何かを企む場所である基地。
木の上でも洞窟内でもいいけれど、
秘密基地という言葉には、何か怪しさが漂う。
しかも龍神のそれは、
死んだおじいちゃんと異界の魔物と、
芸術家たちの夢の残骸が詰まった場所。
羨ましいことこの上ないぞ、龍神。

龍神の家庭は、平和だ。
両親に弟と妹が一人ずつ。
母親は優しい、父親は厳しく真面目で、
弟と妹はそれぞれに輝くものをもっている。
幸福だと龍神自身が思っている。
でも、何かモヤモヤしたものが溜まっている。
叫びたいのに、なんと叫んだらいいのか分からないような。
反抗したいわけでも、そもそも不満もないのに、
自分の中に何かが溜まっていく感覚は、
遠い昔、知っていたような気がした。
ここじゃないと思うその感覚。
でもここ以外の場所なんて知らないし、怖い。
自分のそれは、ガキの背伸びでしかなかったと思うけれど、
龍神はそのモヤモヤが、自分の根幹に関わっていることを、
ほとんど直観的に知っているように見えた。
地味だとかなんとか言っているけれど、
龍神は聡い子だと思う。

龍神は自転車に乗って走り始める。
サイクリングだと嘘をついて、
あてもなく町や山や海辺をさまよう。
この時点で、少年は「秘密」をもったワケですが、
やがてたどり着いた塔の中庭に足を踏み入れたとき、
秘密は、そして家族への違和感は決定的になったんだと思う。
龍神はランドセルを背負う身でありながら、
自分の世界がそこにはないことを知ってしまった。
家族であっても、愛していても、
同じ世界に生きられるわけではないことを、
その後に起きた色々な出来事を通して、
龍神ははっきりと悟ってしまう。
それはまぎれもない成長だし、
それに気がつかないままでいることは、
この子にとってはきっと不幸なことなんだろうけれど、
息子の変化に慌てる父親の姿に同情を禁じ得ない。
もっとゆっくり大人になってほしかっただろうな…。

塔の中は明らかに異世界だけれど、
龍神の世界は、塔の外でも変わっていく。
「異なる」ということが何なのかを、
学校の中で、家庭の中で、
孤独を友だちにする術を学びながら知っていく。
そこにはもちろんおじいちゃんの影響や、
大切な友人の影響もあったけれど、
遅かれ早かれ、龍神はこうなったんだと思う。
ほとんど全ては最初から龍神の中にそろっていて、
ただ芽吹く時を待っていただけ、というような。
子どもというものが、元来そういう存在なら、
その芽吹きに際して、慌てたり悲しんだり、
自分の無力さをかみしめたりするのは、
親というものにとってもそうなのかもしれない。
あっけらかんとはしているけれど、
おじいちゃんだって、息子とは世界が違うことに気づいたとき、
きっと同じように立ちつくしたに違いない。
彼らはやはり、親子なんだなと思う。

家から巣立った龍神が、何になっていくのか。
親父さんたちのような気持ちで、
追っていこうと思う。

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10:42  |  香月日輪  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●ありがとうございます。

すごい感想文でした。
感想文とは、こうゆう事を書くものなのですね。v-7
のん☆ |  2012年08月27日(月) 10:56 |  URL |  【コメント編集】

●Re: ありがとうございます。

コメントありがとうございます。
感想しか書かないので、あまり感想文らしくはないと思われます。
あこん |  2012年08月27日(月) 22:45 |  URL |  【コメント編集】

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