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2010.07.14 (Wed)

ハリガネムシ


ハリガネムシ
(2003/8)
吉村萬壱

のたくるその虫は、
宿主を食らって伸長する。
生温い腹の中で、
本来の場所へ落ち出る日を待っている。

鎌を振り上げるかの虫を見習って、
針金を抱えた野郎は、一人で堕ちればいい。

【More・・・】

ちょいと調べてみたら、
ハリガネムシはカマキリ以外にも入るらしい。
というか、奴ら水棲の虫だったようで、
むしろ陸生のカマキリに飲まれるのは不本意。
てっきりカマキリ限定の寄生虫だと思ってたので、
意外な生態に驚いたり。
まあ、全部ウィキさん情報ですが。
そして、そんな話は感想とは全く関係ないのは承知。
でも、何を思えばいいのか改めて考えると、
どうも頭吹っ飛ばされたカマキリとか、
その腹からくねり出たハリガネンムシとか、
そんな本筋以外の部分ばかりが思い出されて、
結局この話は何だったんだろうと思ってしまう。
「墜ちていく僕たち」っていう森博嗣の本がありましたが、
タイトルだけなら、これにぴったりかもしれない。

堕ちていくいく、というのなら、
それ以前は相応の立ち位置にあったはず。
確かに「私」はまじめな高校の倫理のセンセイで、
生徒指導にもそれ以外の仕事にも、
それなり以上に熱心に取り組んでいる。
社会的な立ち位置としては申し分ない。
話の大筋は、「私」がサチコという女と出会い、
彼女のどうしようもない在り方に引きずられる形で、
元々内部に抱えていた「ハリガネムシ」を露わにする。
文学性云々を無視してざっくり言ってしまえば、
まあ多分そういう話なんだろうとは思う。
ただ何だろう、何か気に食わない。
「私」の暴力性は、
それがハリガネムシだと思ってしまえば、分かる。
でも、それ以外のどこかが腐っている気がする。
寄生虫よりも、このカマキリ自体が嫌だった。

「私」を社会的にも精神的に堕としていく女・サチコ。
という位置づけにあるんだろうけれど、
「私」なんかよりよっぽどサチコの方がまともに見える。
サチコの半生は確かにひどい。
境遇と言っては余りある荒廃を抱えている。
それでも、少なくとも彼女は、
自分の無力に流す涙をもっている。
暴力を忌む気概を失っていない。
そして、堕ちきっている自分を知りながら、
まだ何かをどうにかしようと足掻いているように見える。
何一つどうにもなりはしないけれど。
「私」のハリガネムシに絡め取られたのは、
むしろ彼女の方だったんじゃないかとさえ思う。

最終盤でも、サチコは足掻き続ける。
彼女の人生にとっても、「私」にとっても、
それは落下を止める最後の手段で、
もしかしたら目的は達成された方が良かったのかもしれない。
でも結局、彼女はやっぱり無力で、
「私」はどこまでも生を求める。落下は止まらない。
「私」はきっとこの先堕ちるとこまで堕ちる。
残念ながらそれには何の感慨もわかないけれど、
サチコを道連れにするのはやめろと思う。
「私」を求めたのはサチコ自身で、
そうである以上「私」だけに非があるわけではないとしても、
カマキリにも成りきれないカマキリに、
彼女はもったいないような気がする。
どうやら、自分は心底「私」が気に食わないらしい。
カマキリ呼ばわりって…。

過去にも、「私」と出会ってからも、
サチコは数多の傷を負っている。
壊れてしまわないとしても、
せめて傷の治療は医者に任せてほしいもので。

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