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2010.07.21 (Wed)

憑流


憑流
(2010/2/10)
明野照葉

タダより高いものはない、と言うけれど、
タダなんて本当はあり得ない。
何も失ってはいないつもりでも、
おそらく何かをどこかを持っていかれている。

それが人外の存在相手なら、
お金どころの騒ぎじゃない。

【More・・・】

何かで読んだ話によれば、
ツいている人とツいていない人で、
ツいている割合は同じらしい。
つまり、どちらの人がくじを引いたとしても、
同じ確率で当たりが出る。
当たり前の話ながら、へえと思った。
もし両者に違いが出たなら、それはそれで面白いけれど、
違いには原因げ求められて、面倒くさい話になる気もする。
けれど、この話の中心にいる人・家は、
その語源の通り、憑いている。だから運に恵まれる。
くじを引いて辺りが出ないことなどないし、
日常で遭遇する不快な不運は全て排除される。
それだけでなく、お金も名誉も転がり込む。
万々歳のめでたしめでたし、で終わるなら、
「憑く」はこんなにも不穏な字面じゃないでしょう。

話の大筋はかなり序盤から見えている。
朝比奈家に起こる色々な不運幸運の原因は、
考えるまでもなく、新妻の苑香にある。
しかも話が苑香の親子関係や、
死んでいった者たちの最期の言葉に及べば、
何がどうなっているのかは、想像に難くない。
だから、一応の探偵役である真希が、
えっちらおっちら真相に迫るのは、
なんだから読んでいてもどかしかった。
何が起きているのかを認識して、
事態の打開に動き出してからも、
彼女の回転の遅さに苛々してしまった。
「まぐろ漁船」と「住み込みの仲居」が並んでいるのに、
ただ自分の感傷と後悔に沈むなんて、滑稽なくらいだと思う。

一方で、朝比奈家に起こったことは、
序盤で真希自身が考えているように、
それほど異常なことでもない気がする。
まあ、だからこそ彼女の反応が遅いワケですが。
確かに幸宏はツき過ぎだと思う。
立て続けに人死にが出るのは不幸だと思う。
でも、ないことじゃない。
親はいつか死ぬものだし、
仕事がとんとん拍子で上手くいくことだって珍しくない。
信頼していた人の裏切りは、確かに手痛い。
でも、裏に人外の力を感じるような出来事じゃないでしょう。
だから、全てが終わった後も、
結局朝比奈家に起きたことは、大したことじゃない気がした。
災厄の元凶たる神なんていなくて、
ただ良いことと悪いことが怒涛の勢いで襲いかかっただけ。
そう思ってしまえば、神の存在に踊らされる人々が哀れに見えた。
神を宿した子にされた赤子はどうなるんだろう。

力の大きさも分からない上に、
実際に見ることもできない敵を認識してから、
真希は遅ればせながら、戦うことを決めた。
自分にできるだけの精一杯を試みた。
彼女の戦いに多少期待したんですが、
なんだか戦いにさえならない内にひねりつぶされた印象…。
まさに成す術もない。
それが「神」たるものに挑む恐ろしさと言ってしまえば、
確かにそうなのかもしれませんが、
幸福ボケした人間代表にはもう少し頑張ってほしかった。
散々弄ばれて搾取されて、用なしになったらポイでは、
あまりに祀ることしかできない「人」が哀しい。
神を退治する、とまではいかないまでも、
せめて一矢報いるくらいのことがあってくれなくては、
祀る気持ちの存在自体が怪しげに思えてしまうと思う。
まあ、畏れは恐れなのかもしれませんが。

冷静にカンナミ様の流浪を辿ってみると、
意外と抜けているというか、隙だらけだと思う。
二千年の間そうして生きてきたと言うけれど、
幸宏程度の謀反にさえ脅かされるのに、
よく生き延びてきたもので。


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