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2010.08.28 (Sat)

旅立ち。 卒業、十の話


旅立ち。 卒業、十の物語
(2008/02/27)
ダ・ヴィンチ編集部/編

卒業は変化を強いる。
変われ、成長しろ、と
ぐいぐい手を引っ張る。
なんて憂鬱な季節。

卒業は変化を助けてくれる。
変わらなければ、と
背中を押されて思う。
それは深呼吸の季節。

十人十色の卒業。


【More・・・】

大人の階段は、上る一方なのだろうか、とか、
十代の頃は春になると思っていた。
下りたいとまでは言わないから、
せめて踊り場があって、
止まりたければ止まれたらいいのにと考えていた。
そんな夢想をするほど春が嫌いだったのは、
つまるところ、卒業が、
それに代表される諸々の変化が、嫌だったのだと思う。
様々に描かれる卒業のときを読みながら、
そう思っていたのは自分だけではなかったのだと、
今さらながら気づいた。
それでもそのときは訪れて、
彼らはどこかへ旅立っていく。悲しかった。
どうやら変化が苦手なのは、変わっていないらしい。

卒業をテーマにした十の話。
十人の作家が描く卒業は、
当たり前ながらそれぞれに異なる世界を形成していて、
まるで食べ比べをしているようで楽しかった。
直球で学校からの卒業もあれば、
もっと観念的なものだったり、
ときには宇宙人や異世界への扉が出現したり、
作家の、というか人の考えることは、
本当に十人十色なんだなあと思う。
難を言えば、
作家も内容も異なるとはいえ、
同じテーマで十篇というのは、やや飽きがきた。
すると最後の方に載っている話が、
最初より見劣りしてしまった気がする。
まあ、飽き症な自分が悪いんですが。

十篇の中で気に入ったのは、
小路幸也さんの「あなたの生まれた日」と、
藤谷治さんの「高校三十三年生」。
「あなたの生まれた日」は、
オーソドックスな高校からの卒業の話ながら、
家族であることと、
それ以前に一人であることについての話として、
とてもさっぱりと描かれているように思う。
十代の妊娠や離婚が盛り込まれているのに、
どこにも暗さや重たさがない。
しかも軽々しさもない不思議。
「家族をする」という言い方が、
悪い響きなしに、ぴったりと当てはまる。
幸せになるのは思いの外簡単なことなのかもしれない。

「高校三十三年生」は、
少子化対策を起点としたある家族の笑い話。
落語調の語り口が新鮮だった以上に、
笑い話が笑えるのは、
当人たちが真剣極まりないからなんだなと感心した。
突拍子もない発想の少子化対策は実のところ、
「世間様に顔向けできない」とか、
「親孝行せねばならない」とか、
今時ではないけれど真っ当な思考回路に基づいていて、
なのに発生するワケの分からない状況が面白かった。
変化や卒業は苦手で避けたいと思うけれど、
それでも三十三年生になるまで高校に通うなんて御免です。
全く、太郎と花子には頭が下がる。

恋の云々は別にして、
律子の気持ちには激しく同感だった、
草野たきさんの「覚悟してろよ、渡辺俊太郎!」

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