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2010.09.06 (Mon)

COW HOUSE


COW HOUSE
(2009/6)
小路幸也

ネズ公に利用されて、
一番乗りを逃したという牛。

でも牛は、
多分一番になりたかったわけじゃない。
ただ、他より遅い自分を知っているから、
早く出発しなくてはと思っただけ。
なんて善良なんだろう。

そんなだから、
牛の家は今日も平和です。

【More・・・】

年齢別人口統計を無視すれば、
十二人に一人は同じ干支。
一まわりが十二年なので、
順にそろえていくと、
当然各世代から一人ずつくらいになる。
とはいえ、同い年ではない同じ干支の人々とは、
実際のところあまり語らう機会がないと思う。
上の世代ならまだしも、
制服着た十代の皆々様とはとんと縁がない。
「COU HOUSE」、牛の家に集まる人々は、
というか、何の縁か集まってしまった人々は、
丑男に丑女、丑少女、丑じいさん、ときどき午男。
ヘビならまた違う毛色になりそうですが、
なんだか牛の集まりなんて、平和そのものだと思う。
まあ実際彼らも物語も、総じて平和なので、
さすが牛の家という気もする。

見ず知らずの者たちが何やかやと集まって、
家族的のものを形成していく物語。
と言ってしまえばそうなんだけれど、
この家には異空間じみた雰囲気がなくて、
なんだか不思議な気がした。
疑似家族というものは、
何かからの逃避場所のような、
そうでなければ最後に漂着した場所のような、
安らぎやその他足りない物々を与えてくれる、
いわば異世界なんだと思う。
でも、牛の家はそういうものを与えながらも、
決して現実から切り離されない場所にある気がした。
語り手たるクロにしろ、
ふうかちゃんやじいさんにしろ、
凝り固まった現実の問題をそのまま持ってきて、
それをちょいと縁側に置いてお茶してる感じ。
逃げは逃げなのかもしれないけれど、
夢の場所になりきらない中途半端さが心地よかった。

クロが窓際族という名の若隠居になった理由や、
美咲が腹を空かして行き倒れた理由は、
結局のところはっきりとは語られない。
いつ明かされるのかと思っていたら、
あっという間に問題の問題になっているところ、
まさにそこだけが解決されて、
ちょいと拍子抜けしましたが、
まあこれはこれでいいかとも思います。
とりあえず牛の家は新たな役割を与えられて、
なんとかかんとか平和にやっていけそうだし。
剣で追い立てられる闘牛は別にして、
牛さんは平和に草を食んでるのが一番いいと思う。
牛だけじゃく、人もそうなのかも。

牛の家に一番深く関わっていたのは、
おそらくクロではく、坂城部長なんでしょう。
青春を間近で過ごし、そしてその死を看取り、
三十年間過ちの場所から背を向けず、
再び縁が回ってくるまで走り続けた部長。
クロじゃないけれど、
本当に凄くてカッコいい人だと思う。
まあ、最終的にそんな部長まで手玉にとって、
どこぞの拝み屋のようなプレゼンを、
飄々とやってのけたクロが一番の悪玉でしょうが。
彼のプレゼンはまさに夢と希望の産物で、
そしてその両方を生みだすものでもある。
夢や希望なんて並べたてたら、
一気に白けてしまいそうなものなのに、
この家に限ってはそういう場所でいいかという気がした。
逃避のようで現実で、現実なのに夢と希望がある。
牛の家は不思議でできている。

美咲ちゃんは料理上手らしいし、
天才ピアノ少女もいるし、
ぜひとも一度行ってみたい豪邸のお話でした。
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