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2010.09.08 (Wed)

狼と香辛料(2)


狼と香辛料2
(2006/6)
支倉凍砂

誇りを失わないこと。
命よりも大事なものを持つこと。
それは確かに重要で、
かつ美しい生き方だと思う。

ただ、自分の何もかもを、
泥まみれの傷だらけにして、
それでも生きることを、
他を生かすことを選べるということは、
見上げた生き方の一つに違いない。

侮りがたし、商人ロレンス。

【More・・・】

実体を伴わない取引、とか聞きますが
そもそも実体って?な人間なので、
経済・金融・商取引の知識レベルの低さは、
まあ、いわずもがな。
ただ、物の価値が「人々」の気分や、
天候・社会全体に関わるイベントに左右されることは、
なんとか理解できているはず。
現代なら、完璧は無理でも、
少なくとも変化があればすぐに知ることはできる。
けれどロレンスとホロが旅する世界では、
街と街を行き来する数日の間に、
確実な商品がゴミに変わって、
しかも情報はつかみにくいときている。
それで破産すれば、即時余命まで決まってしまう。
当然の理と言えばそうですが、
やはり世知辛いなあとか思った。

時間経過から言えば、
前回の街での騒ぎからは数週間しか経っていない。
つまりロレンスとホロの付き合いも、
精々一、二カ月のはず。
の割にロレンス、ホロの扱いが上手くなったなあ。
まだまだ手玉に取られることが多いとはいえ、
数百年を生きる賢狼と渡り合うとは、
この男やはり大したものだと思う。
まあ、ホロがかなり子供っぽいので、
実際に子供を扱うときと同じように、
やり方さえつかんでしまえば、
ツボを押さえるのはそう難しくもないのかもしれませんが。
適度に褒め、適度に美味いものを与えて、
下手に出ながらも、ときには身を呈して守ってやる。
こう書くとホロがアホっぽいですが、
賢狼さまはそういう手練手管さえも可愛いと思っているんでしょう。

ホロはいつも通り、
ロレンスに対してはやりたい放題。
ただ、終盤で彼女が呟くように、
確かに今回は色々と我慢していた。
嫌いな羊飼いと旅だってしたし、
ロレンスの生活を考えて力を押さえたし、
どん底のロレンスの傍で慰め役にも回った。
狼の先輩としての鷹揚さも見せた。
だからまあ、いよいよとなって冷静にブチ切れたのは、
いわば仕方ないことなのかもしれないなと思う。
よくよく考えれば、ホロは神にも等しいわけで、
それをこれだけ我慢させて、
しかも屈辱まで与えて、
無事にすまそうって方が虫がいい。
それでもレメリオ商会各位には、
少しばかり同情申し上げるけれど。

窮地に追いやられても諦めず、
どうにかしようと画策した挙句に、
結局ホロに頼ることになってしまったわけで、
ロレンスの無力感たるや半端じゃないと思う。
それは男としてとか、商人として以上に、
失態を自分で尻拭いするという、
一社会人の矜持に関わるもので、
一度ホロの手を弾いてしまっているだけの傷は深いはず。
それでも、そんな自分の矜持を横に置いて、
他人の命を守るために他の力に頼ることを厭わないロレンスが、
なんだかやたら格好良かった。
プライドや見栄を捨ててでも最悪の中で最善を尽くすなんて、
そうそうできることじゃないと思う。
前巻でも商人としての手腕に驚いてけれど、
老獪な賢狼をして「好きにしろ」と言わしめ、
超ド級のマイナスを0にまで戻す商人・ロレンス。
この物語は、ホロに魅了されているだけでは勿体ないやも。

狼に戻ったホロ。
その背にロレンスが乗って走る様に、
どうも「もののけ姫」を思い出してしまった。
雌雄は逆転しているけれど。
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