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2010.09.15 (Wed)

皇国の守護者2 勝利なき名誉


皇国の守護者2 勝利なき名誉
(1998/7)
佐藤大輔

銃剣を突き上げるその瞬間、
想いは意味を失い、
ただ彼らは命の感触だけにすがりつく。

けれど、血煙けぶる場所へ駆け出す、
その足の震えを止めるものは、
一体誰への、何への想いなのか。


【More・・・】

騎士と武士の違いは、
命をかけるものにあるのだと聞いたことがある。
騎士は己の誇りに命を賭し、
武士は主の誇り、体面のために腹を切る。
これで武士を見下げるか見上げるか、
それは人それぞれだと思うけれど、
あえて分類するとして、
彼らともう一つの人種、軍人は、
明らかに一線を画すのだと思う。
彼らは確かに命をかけて戦う。
でも主、つまりは国とかその民や帝のため、
それを思って人殺しをするのかと言えば、
必ずしも適当ではない気がする。
「この国に何が」
それを繰り返す新城を見ていて思った。

今回は北嶺紛争終盤から皇都への帰還、
駒城家でのわずかな休息まで。
帰還まではマンガで読んでいたものの、
やはりゾクゾクさせられた。
普通、躍動や疾走を活字で表そうとすると、
どうしてもまどろっこしさが問題になると思うけれど、
本当にわずか言葉だけで、
騎兵に対して踵を返す新城とか、
千早が一閃の内に人をなぎ倒す様、
それから、死の瞬間そのものを、
さらりと描き出してしまうのには恐れ入る。
マンガの演出は見事だったし、
アレ自体には何の不満もないけれど、
小説の方を読むと、活字の力みたいなものを感じる。
これだから本から離れられない。

新城の複雑さ、というか面倒くささは、
一体どこから来ているもので、
周囲はそれをどう見ているのか、
駒城篤胤や蓮乃、それから友人たちとの関わりの中で、
なんとなくわかったような気がします。
結局のところ、新城という男は、
表面上は意地の悪さと偏屈、剛胆が読み取れるけれど、
内部にあるものは、怯えと自己嫌悪それだけ。
それらを自己と他者両方の分析の篩にかけて、
適切化と簡略化を行うと新城になる、ような気がする。
そういう過程を経ること自体は、誰にでもあることだし、
むしろそれなしでは生活が立ち行かない。
ただ新城のそれはいささか完璧すぎて、反発を招くのだと思う。
まあ、この人はその反発や
周囲の摩擦からくる自己嫌悪に対してさえ分析的なんだけれど。
ああ、やはり全ては本人言う通りなのかもしれない。
なんて単純で面倒くさい男なんだ。

そんな性質のせい、だけとも言い切れないけれど、
新城は戦場の外でも面倒に好かれてしまうようで、
政治的な役割に引っ張り込まれる模様。
しかも陸軍にはいられなくなるらしい。
それがどれほどのことなのかは、
いまいちよく分からないんですが、
近衛衆兵というところ弱兵の集まりだそうで、
またこの人は敵の強大さ以外の所で苦労するんだろうなあ。
そういえば陸軍から離れても、
剣牙虎を伴う隊は維持されるんだろうか。
士官学校に入るときには、
子猫だった千早に対して涙ぐんだくらいの人だし、
猫から離されてしまうのは不憫なような。
新城以上に千早が悲しむような気もするし、
ぜひともその辺りは配慮してほしいもので。
まあ新城自身か駒城家がうまいことしそうだけれど。

軍人と剣牙虎と幼児しかも女の子…。
異様ながらなんとも平和な組み合わせで、
新城がどう思おうと、
駒城家は彼のホームなのだという気がしました。

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