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2010.09.17 (Fri)

炎の蜃気楼30 耀変黙示録Ⅰ 那智の章


炎の蜃気楼30 耀変黙示録Ⅰ 那智の章
(2000/3/31)
桑原水菜

救わなければと思う相手が、
侮蔑と恐怖を込めて、
石を投げつけてくる。
それでも手を差し出せる者が、
一体どれだけいるだろう。

それでも体も魂も、
差し出さずにはいられない人を守るのは、
どれほどの痛みなのか。
なあ、直江。

【More・・・】

この国では神代の昔、
人と神は近かったらしい。
人がどうのではなくて、神の方が人間臭かった。
だから間違いもしたし、その分反省もした。
国造りの神話の中心におわす二人も、
そういう神々の一部なんだと、
やたら博識な直江の話を聞きながら思った。
異形の子供であることを理由に、
生まれた我が子を流してしまう神。
まるで本当に人のよう、
というか正しくは人が彼らのよう、なのか。
「今空海」であり換生者である高耶を、
そこに重ね合わせたとき、
人と神、生者とその魂の境は曖昧になる。
毎回のことながら、えぐってくるなあ。

長らく四国に閉じこもっていましたが、
久しぶりに高耶さん、本州上陸。
本当に長かったなあ。
おかげで行ったこともないのに、
四国、特に高知の地名に強くなったという…。
戦いがあったところなら、
周辺の地形まで思い浮かべられる気がする。
それはそうと今回は熊野。
そういえばまだやってなかったっけ、
くらいの有名どころなワケですが、
相変わらず知らないことの多いこと。
シャングリ・ラ」と京極さんのおかげで、
ヒルコやエビスについてはまだ多少分かりましたが、
ここまで読んでおいていまだ密教って?な感じなので、
一度ちゃんと勉強しようかな。

裏四国の話が始まってからというもの、
生者と死者の生存競争の話が中心で、
闇戦国やら怨将はおろか、
上杉という言葉さえ随分遠くなっていたので、
今回那智の者からの救援要請を受けて、
高耶さんが毒の体を引きずっていく様に、
なんだかやたらと懐かしくなりました。
元々は、現代人の命と体は彼らのもの、という
その大前提に立って、調伏を行ってたはずですが、
今はその前提を彼ら自身が否定している状況で、
しかも那智には特殊な事情がある、とはいえ、
現代人たる那智の者の虐殺を容認するのは、
「今空海」としての仰木高耶ではなく、
上杉の換生者としての彼にはできなかったのかもしれない。
彼の今の生は、そこに始まりがあるから。
だんだん超然としていく高耶もそれはそれだけれど、
一人を救うために自分の身も魂も削るような姿も
直江には悪いけれど、惹きつけるものがあると思う。

そうして久方ぶりに現代人のために動く高耶にとって、
信長のやり口はタイミング的に最悪、
というか、最適過ぎてむしろ感心する。
マスコミと大衆を使った攻撃、とか
本当にこの人戦国武将か、という気もするけれど、
まあ、人心の揺れやすさは今も昔も同じなのか。
それをよく知っているからこそ、
人の上に、いや人を足場にして立てる魔王なんでしょう。
前回に引き続き懐かしい面子がいくらか出てきた中でも、
妹の美弥ちゃんはもう色々感慨があり過ぎて、
登場だけでこみ上げてくるものがあった。
一瞬でいいから、兄の電話が繋がってほしかったけれど、
まあ、かの魔王やら高坂弾正やら、
周囲にうごめくものは平穏とはいかないので、
再会まで期待するのは無理かと思いますが。
四国そのものと同じように、どこか閉じていくような高耶が、
この機会に自分を取り巻いていたものを思い出してくれたらいい。
なんて、やはり無理な相談か。

桑原さんのあとがきの、
「注射男」って何だろうと一瞬考え、
それから、なるほど、と笑ってしまった。
あれにあった意外なあの効果の話か…。
確かに注射男だわ、直江の旦那。
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