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2010.09.24 (Fri)

椰子・椰子


椰子・椰子
(2001/4/25)
川上弘美

何一つ思い通りにはいかないし、
不条理と意味不明のオンパレードだけれど、
そこは誰でも行けるワンダーランド。
無料で安全で、しかも毎日通える。
なんて素晴らしい。

一度川上さんと一緒に行けたらいいと思う。
きっとアリスも目じゃない。

【More・・・】

妄想をすることはよくある。
たとえば人でごった返すプラットホームで、
足首くらいの高さに縄跳びを張って、
突然すばやく動かしたら、
どれくらいの人が跳べるかなあ、とか。
でも怪我人を出しちゃいけないから、
安全にそれを実施するにはどうしたら…。
というか、どういう権限をもてば、
それを実行できるようになるんだろう。
駅長、何かの教授、いや政府の役人か?
というのが、高校時代の通学時の妄想だった。
妄想にはよくあることながら、
進めれば進めるほど、明後日の方向へ向かう。
けれど、そんな自分の妄想など、
なんて凡庸でありがちだったんだろう、と思った。
川上さんの「縄文人街」、行ってみたいなあ。

日記形式で語られる不思議の世界。
窓辺には「ジャン」と「ルイ」という鳥が訪れ、
彼らに雨蛙をプレゼントされたり、
三角関係の相談を受けたりする。
子供を畳んで押入れにしまったり、
親族会議の上座にパンダがいたり。
渋谷ではニホンカモシカと目を合わせてはいけないらしい。
一体どこをどう探したら、
人の頭の中にこんな世界があるのかと思う。
しかも全く脈絡がないのかと言えば、
そうとも言い切れないあたりがまた妙で、
主人公は夫も子供もいて、でも片思いの最中。
彼からもらった花を電話の横に置いて、
電話のベルが甘くなった、などと言う。
言ったそばから町内会長の殿さまが家に来たり、
縄文人街に出かけたりするのだから、小憎らしい。

とは言うものの、
日記の書き手の住む世界にどこか懐かしさを覚えるのは、
一体何なんだと思いながら読んだ。
パンダを上座に置いたこともなければ、
冬眠用品を買いに行ったこともないのに。
でもあとがきを読んで納得した。
確かにこの不条理で意味不明で、
なのにそれに何の疑問も抱かない自分がいる世界は、
行ったことがある場所だった。
縄文人街には行ったことがなくても、
鮫と陸上でデットヒートを繰り広げたことはある。
幼児係を仰せつかったことはないけれど、
キャサリン捜索隊に加わったことはある。
なんとなく不条理感が似ている気がする。
そう思うと、こういう奇妙な世界は、
誰のものも繋がっているのではないかという気がする。
夢の世界は一つなのかもしれない。
おそらく阿呆のように広いんだろうけれど。

物語を書く姿勢は、
多分書き手によって様々で、
計算してひねり出す人もいれば、
あふれるままに書く人もいるんだと思う。
ただ、この「夢」という形は、
ちょいと反則じゃないかと一瞬思った。
でもよく考えれば、夢だからなんだという話で、
ひねり出そうが夢で見ようが、
頭の中から出てきたものには違いないし、
面白ければ勝ちなんでしょう。
そもそも他人の夢の話は大概面白くないのに、
この「椰子・椰子」は抜群に楽しかった。
それはちゃんとこれが「物語」になっているからで、
半分くらいは「夢」というのはその辺りなんだろうなと思う。

夢が繋がっているのなら、
悪夢の中でも怖くないかも、と思ったけれど、
まあそう思う余裕もないのが悪夢か。
今夜は楽しい場所へ行きたいもので。
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テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


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