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2010.10.08 (Fri)

インターセックス


インターセックス
(2008/8/5)
帚木 蓬生

人の体は変わっていく。
ここが進化のどん詰まりではないのだから、
滅びる日まで、変わり続ける。

ならば、白も黒もないだろう。
数多の灰色の、その程度に線引きをする。
そんな常識など、
現実から目を背けるという、
ただそれだけのための道具なのかもしれない。

【More・・・】

医者でも看護師でもないので、
病院に行くとすれば、
それは必ず患者かその家族として、になる。
とすると、病院は憂鬱な場所で、
できればご厄介にはなりたくないし、
そもそも行くには大なり小なりの障壁がある。
精神的にも経済的も。
なのに、小さな頃から通わねばならないとしたら。
しかも周囲に嘘をついたり、
恥辱に心を裂かれたりしながら。
インターセックスの人々が置かれる状況は、
あまりに苦しくて痛々しくて、
読んでいて何度も目を背けそうになった。
けれど、関係ないと耳をふさぐことは、
それ自体が刃で罪なのだという言葉に、
何度も背筋を正した。

男と女の間に位置する性について、
多少は知っているつもりで読み始めたものの、
実際は何も知らなかったのだと、
かなり序盤で気がついた。
「曖昧」という言葉で片付けようにも、
現状は本当に人それぞれで、
白黒灰色という三色の中の、
灰色の部分に分類される人々の多様さといったら、
なんだか柄にもなく神さまの思惑を感じてしまった。
もちろんその真意なんか分かるわけもないけれど。
世の中には男と女しかいないのだから、なんて
この先はどういう文脈でも言えないと思う。

様々な手術の方法や「治療」が出てきますが、
素人からすると、どの方法にしても
人の体の柔軟さを感じずにはいられなかった。
「切る」はまだしも、切って殖やして縫って繋げて…。
科としては泌尿器科・産婦人科に関するものが多いものの、
一部にアルツハイマーやパーキンソンの話も出てきて、
よくもまあ人の頭はそんな方法を思いつくものだと、
呆れながら感心してしまった。
健康でいたい、という望みは、
決して責められるものではないけれど、
その根底に多数派でいたいという願望がある、という指摘は、
とても新鮮で、考えたこともない見方だった。
心が決して多数派でだけはいられないように、
体もそうだとしたら、
確かに「健康」は多数派を指向するものかも。
ただそういうこと以前に、
生きたいと望むこと自体は思考の外にある気がする。

インターセックスのことを学びつつ、
秋野先生はミステリの中に、
というよりサスペンスの中に踏み込んでいく。
事件の構造はそれほど複雑でもなく、
状況と病理部長が見つけてくれる証拠を並べると、
苦もなく核心にたどり着けるわけですが、
見えてくる構図があまり釈然としない。
真実を明らかにしても、誰も救われない気がして、
もうモンスターのことは放っておけ、と思ってしまった。
そうでなければ拝み屋を呼んで欲しかった。
最先端医療の現場に黒衣の拝み屋…。シュールだなあ。
それはそうと最終盤になって明かされた秋野先生の秘密は、
先生の考え方、振る舞い等々を考え合わせると、
自然と導かれる範囲のものだったので、
あまり驚きはしなかったものの、
それでもその毅然とした態度と繊細なもの言いに、
この人が歩んできた人生の苦みが透けるようで、
また切ないような気分になった。

モンスターが選んだ道は、
潔いようで無責任で、
周囲のことを慮っているようで自分勝手だと思う。
これから秋野先生がどうするのか、
続編があればまた読んでみよう。
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