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2010.10.10 (Sun)

吉原という異界


吉原という異界
(2008/2)
塩見鮮一郎

そこは金で買える夢の国。
あるいは愛欲の里。
はたまた悲劇が幅を利かす苦界。

幻想のようだけれど、
現実に江戸と共に生きた「吉原」。
その、ある横顔を見た。

【More・・・】

遊郭といえば、吉原。吉原といえば、遊郭。
ほとんどそういう式でその地名を認識していた。
江戸時代を舞台にしてれば、
たとえ町人商人が主役であっても、
「吉原」という名は物語の種類に関わらず出てくる。
憧れとやっかみをもって語られたり、
あるときは生き地獄として描写される。
そこは男のための女の園。
塩見さんが何度も指摘するように、
私自身も楼主とは哀れな女を世話する顔をして、
金儲けに精を出すオヤジだと思っていた節がある。
まあ「幻月楼奇譚」のようなものを読むと、
ファンタジーだと分かっていながら、
そういう時代や店もあったかも、とは思ったけれど。
とはいえ、それら全ては幻想のようなものだったらしい。
今は昔の「吉原」の一面を垣間見た気がする。

なんとなく吉原という場所は、
江戸の町と共にあったようなイメージを持っていたけど、
それはあながち間違っていなかったようで、
雨後の筍よろしく江戸に遊女屋が乱立したのは、
江戸幕府の始まりと深く関わっていて、
その図式はまさに需要ある所に供給ありといった体。
思わず苦笑いしてしまった。
もちろん「供給」されるものが何か、ということや
そうしなければ生きていけない背後にある貧困は、
無視できないし、してはいけないと思う。
けれど、ただ単純に「需要」の存在が、
なんだか可笑しいような気もする。
文中にたくさんある引用の中に、
吉原へ向かう男たちの高揚や、
そわそわした後ろめたさの描写があって、
妙に吉原という堀の中の世界を身近に感じた。

吉原が吉原になるまでの変遷には、
その内部の制度や決まりごと以上に
知らなかったことが多く、ふむふむと読んだ。
江戸が火災の町であったことのご多分にもれず、
移転前も後も吉原も何度も炎に見舞われている。
それに関して「遊郭(さと)のはなし 」では、
楼主の強欲と遊女たちの悲惨な最期の話があったけれど、
そういう事件が実際にあったとしても、
燃えようが移転を強制されようが、
青空教室かというくらいのたくましさで、
仮宅営業の形で商売を再開する様には、
やはり楼主の、そして女たちの強さを思わずにはいられない。
まあ、すぐにでも再開しないと、
修繕費用も稼げないわ、客は離れるわ、
とても生活していけないような事情もあったとは思いますが。

「花魁」や「太夫」がどんな階級なのかも知らなかったけれど、
主役である女たちのこと以外にも、
知らなかったことの多いこと多いこと。
最初から見番は置かれていたものと思っていたし、
堀は単純に逃亡防止用で、
女が大門をくぐるのは入るときと身請けされるときだけだと、
ほとんど思いこんでいたんですが、違ったらしい。
女の芸者になぞらえて「男芸者」ができたのではなく、
女の芸者が出現したから「男」で分けたことも知らなかった。
加えて塩見さんが「わからない」と書いていることにも、
いくつかは興味がある。
吉原の話の本筋ではないので割愛された所は、
塩見さんの他の著書をあたるとして、
他は関連の本をまた探さなければ。
「吉原」の概要を知ろうと読んだのに、
思いがけずまた本の山が高くなる結果に…。
まあ、本望といえば本望か。

時代がそう遠くないわりに、
内部の人間が記したものが少ないことに、
吉原が「異界」であった、
そう思われていた現実を思った。
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Comment

●なし

偶然、お書きになった批評に
めくりあいました。
ずっと読みながら、
安定した文章がつづいて行くのに
感心しました。
どうもありがとうございました。
塩見鮮一郎 |  2015年11月03日(火) 03:59 |  URL |  【コメント編集】

●Re: なし

コメントありがとうございます。
思うままの文章でお恥ずかしいですが、お読み頂けて光栄です。
あこん |  2015年11月07日(土) 16:04 |  URL |  【コメント編集】

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