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2010.12.03 (Fri)

僕とおじいちゃんと魔法の塔3


僕とおじいちゃんと魔法の塔3
(2010/9/25)
香月日輪

遅いよりは、
速く走れる方が何かと便利だと思う。
少なくとも1着は気持ちいい。

ただ、100m走では勝てなくても、
障害物競争や借り物競争なら、
無敵だというような人間もいる。
それはそれで小気味いい。

オリンピックには出られないけれど、
それで困らないなら、
自分は後者でいい。
もちろん100mも全力疾走した上で。

【More・・・】

同じだけの努力をすれば、
同じ結果を得られるかというと、
どうやら世の中そうでもない。
そこに生まれる差を才能と呼ぶのなら、
天才と言いたくなるくらい、
始めから何もかも持っているように見える、
そういう人間も確かにいる。
でも、だからと言って、
龍神や秀士郎じいちゃんが言うように、
天才に出会う度、
彼らを自分の世界の外に排除することが、
賢い方法だとはどうしても思えなかった。
少なくとも高校生になったばかりで、
そんなに悟らなくてもいい気がする。
みっともなく嫉妬して羨んで、
それで阿呆のように突っかかって、
結果、バカだったなあと思うならまだしも。
こんな考え方の違いさえも、
多分龍神は静かに受け入れるんだろうけれど。

一応前巻の時点で高校生になってはいたものの、
空白の三年間の変化を追って、
それだけの終ってしまった感じだったので、
今回はやっと高校生らしく、
学校での新しい出会いや、
テストや部活なんかの話が出てきて、
どこか浮世離れしつつある龍神も、
ちゃんと一高校生なんだなあと思ってほっとした。
龍神としてはおそらく、
魔法や幽霊や魔女なんかの「不思議」と、
節度をもって付き合っているんだろうけれど、
傍から見る少し心配だった。
日常的に魔法を目にして時に恩恵にあずかっていて、
そんなものとは全く関わらない世界に、
ちゃんと根をもっていられるのか。
でもこの少年に関して言えば、
そんなものは全くの杞憂だったようです。

エスペロスという嵐を迎えて、
塔が格段に騒がしくなったと思ったら、
今回新しい仲間が増え、
どうやらギルバルスの平穏な日々は遠そう。
まあ、一色先輩は騒がしさとは無縁だけれど。
この感じで塔に出入りする人間が増えるなら、
かつておじいちゃんたちがそうしていたように、
この塔は情熱と才能のるつぼになるのかも。
それはそれで楽しそうだけれど、
龍神と信久の心と体の鍛錬の場として、
静かで力強い引力をもって、
どんと塔が立っているだけの時が、
なんだか少し惜しいような気もします。

毎回感心するけれど、
自分に出来る形で強くなろうとする信久は、
もしかしたら龍神よりも誰よりも、
タフな心をもっているのかもしれないと思う。
無力な自分を発見したとき、
落ち込むという過程をすっ飛ばして、
じゃあどうするかを考えられるなんて、
全く見上げた根性の持ち主で。
小学生の頃に大きなハードルを越えて以来、
自分の道を見定めて邁進してきた龍神も、
多分平均よりかなり大人なんだろうけれど、
日々の小さな出来事の中で、
いちいち自分と他人を発見しているような、
伸び盛りの新芽みたいな信久の方が、
単純に好ましく見えた。

エスペロスが今の路線とは反対の路線を選んでいたら、
この学校のこの学年の雰囲気は、
かなり違ったものになっただろうなと思う。

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