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2010.12.13 (Mon)

ガニメデの優しい巨人


ガニメデの優しい巨人
(1981/7/31)
ジェイムズ・P・ホーガン

よって立つ地面を失うことは、
重力を伴侶に生きる以上、
極上の恐怖だと思う。

地球の人類も、
異星の友人たちも、
その冷たい浮遊感を知っている。


【More・・・】

地球の上で起こった進化の歴史。
それを一つ一つ掘り起こし、
繋げて夢想して理論を立てて、
そうして人は自分たちの由来や、
生物界の理を明らかにしてきた。
化学や物理の世界で、
日進月歩という逆転劇が今も続いているのは、
日々便利になる生活で実感できるけれど、
今さら進化論、自然淘汰の理論が覆されるなんて、
もうほとんど誰も思っていないと思う。
それはおそらくハントたちの時代も同じだった。
でも、それは起こった。
地球の上で組み立てた理論は、
真理でもなんでもない、ただの一事例だった。
自分の世界が生体内だと知った菌は、
こんな気持ちになるのかもしれない。

第一作「星を継ぐもの」で残された謎が、
悲劇のガニメアンたちの帰還で解明される今回。
自分たち以前に高度な文明を築いた「ヒト」がいただけでも、
人類のアイデンティティを揺るがしかねない衝撃なのに、
ガニメアンたちの存在、その文明、
そして彼らの母星・ミネルヴァの進化の歴史は、
もう大地が揺らいで割れるレベルだと思う。
少なくとも2010年現在でそんなことが起きたら、
暴動やら何やらで死者が出そう。
そう考えるとハントたち、
つまり木星までならなんとか行けるくらいには、
科学と社会を進めた人類が、
ガニメアンを驚きと歓びの下に迎えたのは驚異的だった。
ガニメアンの性質によるところも大きいけれど、
「悪夢の星」の住人である人が、
ここまで穏やかに星の「異なる」者を、
受け入れられるようになっている、
それがひどく嬉しくかった。

ガニメアンが人類と交流をもった時間は、
彼らが越えてきた時間に比べれば、
一瞬のことと言えるくらい短い。
その間に両種族が交わしたものは、
知識の交換だけではなかったように見える。
彼らは一緒に食事をし酒を飲み、冗談を飛ばし合った。
この邂逅は奇跡的な確率で実現したのだから、
後世に遺せるもっと実質的なものを、
さくさく交換した方がいいんじゃないか、とか
そんな邪な助言をしたくもなるけれど、
彼らの触れ合いはまるで旧友との再会を喜ぶかのようで、
高次元というのは何も0と1の世界じゃないんだなと思った。
同じように、進化は必ずしも効率化ではないんでしょう。
地球での進化の結果、人が人に至ったように
ミネルヴァでガニメアンが生まれたことは、
何の不思議もない当然の帰結。
あの優しい巨人たちを自然に生みだせるなら、
こんな風な人類も生む真理も捨てたものじゃない。

ひたすらに優しく穏やかなガニメアンが、
自分たちの生き残りのために犯した過ちは、
確かに地球とガニメアンなきミネルヴァに惨状を生んだ。
彼らの性質から考えて、
それを重く真摯に受け止めるのは当然で、
そしてガルースの見方も正しいと思う。
ハントたちは確かに忌むべき性質を御しつつあるけれど、
それでも未確認飛行物体をいきなり砲撃してしまうような、
危うい部分も変わらずもっている。
多分、ガルースの選択は正しい。
でも感傷的なのを承知で言えば、やはり悲しい。
ガニメアンが地球を新たな母星にできる可能性だって、
そう低くはなかったと思うし、
何よりあの愛すべき巨人たちを、
また暗黒の空間に旅立たせなければいけないのが苦しかった。
一応最後の最後で希望が提示されたので、
あとはハントたちと同じく無事を願うだけですが。

一作目の冒頭のシーンの謎はまだ未解明なので、
三作目も読まなくては。
まあ、そんな謎なくても、
面白くて読まずにはいられないと思うけれど。

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