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2011.01.03 (Mon)

炎の蜃気楼33 耀変黙示録Ⅳ 神武の章


炎の蜃気楼33 耀変黙示録Ⅳ 神武の章
(2001/11/2)
桑原水菜

一つのものを想い過ぎると、
人は人で在れなくなるのかもしれない。
昇華の先の神も堕ちた先の鬼も、
その意味では同じなんだろう。

自ら人であることをやめた男の述懐は、
人を名乗る誰の言葉よりも、
人である痛みに喘いでいるようだった。


【More・・・】

いきなり緊迫した場面から始まって、
一体何事かと思った…。
何事も何も本当に前回の続きでした。
滝の下での再会と戦闘。
憑依のために露わになった綾子の真情に、
直江が死にかけながら応えて始まる今回。
どんな現代人よりも死に近しいくせに、
本当の死からは遠いこの人たちとって、
死は一体何なのだろうと思った。
橘義明の肉体を失ったとしても、
実際後半に肉体替えについて言及している通り、
直江信綱の魂は彼岸へ行かない。
ただ、換生し直すにしろ、
千秋のような形で留まるにしろ、
直江にとってそれは死になんだろうと思う。
なにしろ彼の人の死まであと半年。
四百年の月日を思えば、あまりに短い。

弥勒パワー炸裂の譲を相手にして、
無事で済みそうなのは誰か、と考えると
お父上降臨か、と思ってましたが、
半分正解でした。
お父上はお父上でも、氏康さん。
すっかり忘れていましたが、
この方も人を超越してしまった一人でしたね。
まさか空から救援がくるとは予想外。
ヘリコプターで移動したり、
火器をぶっ放すのが当たり前になりつつある状況で、
龍に乗って危機から脱出、とは
古風なのか、いや逆に最先端なのか。
たてがみに顔を埋める高耶さんを見ていて、
エンデの「はてしない物語」を思い出した。
幸いの竜どころか忍の長っぽいけれども。
緊迫感を無視して、いいなーとか思った。

千秋と高耶、そして直江と晴家等、
久しぶりの共闘には燃えるものがありましたが、
それはともかく、とか言ってしまいたくなるほど、
小太郎の活躍には心躍ってしまった。
はるか以前に高耶のピンチに駆けつけた時同様、
描かれない黒豹の一人旅を想像するだけで、
もうなんだかこの男は!という気分になった。
しかも今回はいつぶりかに喋った!
小太郎が、喋った!二回書いてしまう。
クララが立った以上の感慨が。
けれど甚だ少ないその言葉は、ひたすらに苦しい。
人であることをやめたかった、なんて
そんな述懐を聞いていると、
一定の場所を確保している直江が幸せ者に思えてくる。
これだけの時間を獣の姿で二人を見続けて、
求めるものには手が届かないことを思い知って、
それでも高耶から離れない。
この人を救ってやれる誰かがいたら良かったのに。

黒豹状態の小太郎ならいざ知らず、
思えば人間の小太郎と兵藤は面識がないのか。
まあ今は内面に反してチャラ男だけれど。
静かに高耶の傍に控える小太郎に対して、
兵藤が自分と似たものを感じるのは、意外だった。
確かに高耶あるいは景虎から目を離せないという点で、
二人は直江も入れて同類なんだろうけれど、
三人がそれぞれに指向するものは、
実際のところ全く別のベクトルなんじゃないかと思う。
その一つ一つを一言で言い表すのは難しい。
一言で言ってしまえるなら、
直江の四百年も、兵藤の足掻きも、
小太郎が獣の身を選ぶしかなかった痛みも、
どれも生まれはしなかったには違いない。
それでも、命の終わりが見えたとき、
狂ったように叫び散らせる相手も、
実現しない夢を語ってやりたい相手も、
直江だというなら、高耶の指向だけははっきりしている。

高耶が語る夢物語の情景に、
黒豹がいてほしい。
土間に伏せることになったとしても、
きっとあの男は越後についていく。

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