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2011.01.26 (Wed)

星は歌う 10巻


星は歌う10
(2011/1/19)
高屋奈月

あなたのために、なんて
叔父さんも聖も奏さんも
決して言わない。
千広だってサクヤだってそうだろう。

地面がそこにあるとわざわざ口にすることに、
どれほどの意味もないのだから。


【More・・・】

傷心旅行、かのセンチメンタルジャーニーは、
失恋のためにあるような気がする。
どんな形で心に傷を負ったにせよ
元凶が自分の外側に厳然とある場合は、
旅から帰ればまたそれと向き合わねばならない。
それに対して失恋が痛手になる原因は、
結局のところそれは劣等感だと思う。
「自分はあの人に選ばれるに値しなかった」
あるいは「自分でない誰かが選ばれた」
その想いが傷になって痛む。
自分を見つめ直して自尊心を回復するために、
だから旅に出るんじゃないか、とか
恋のなんたるかも定義せずに、失恋を定義してみたり。
そんな具合に友情より明確な形で示される優劣が、
恋愛に欠かせないものであるならば、
千広の態度もサクヤの潔さも、わきまえた行いなんでしょう。
憤る聖の気持ちもよく分かるけれど。

千広の選択は誰から見ても最善には見えない。
サクヤの言う通り暴力は感心しないけれど、
聖が拳を奮うのにはそれだけの理由があるし、
叔父さんが頭を抱えるのも当然。
当のサクラ母娘にしたって、止めたくなるでしょう。
でも、逆の選択をしたらどうなるのかを考えると、
千広にできるのはこの道を選ぶことだけなんじゃないかと思った。
もしも千広が町に残ったなら、
サクヤは嬉しいだろうし、千広も苦労しない。
サクヤを愛する人々はきっと祝福してくれる。
でも、その後ろで確かに一つの声が黙殺されて、
女の子が一人闇の中に取り残されることになる。
その暗闇の冷たさを知る人間として、
声が届いてしまったからには、
千広は聞こえなかったことにはできなかった。
そして他の何を、誰を想うより前に、
サクラの声が届いたことを喜んでしまった以上、
それはサクヤよりも大事な人がいるということに他ならない。
多分、そういうことなんじゃないかと思う。
一読目は聖もっとやれと思ったんですが、
何度か読み返してみて、そう思った。

一方サクヤは最初のショックから、
存外早く立ち直っている。
かなり厳しい家庭環境にあっても
決して命を投げ出さなかった彼女からしたら、
サクラの行いは許容できないだろうし、
何より千広を失うのは彼女が原因なワケで、
順当に行けば一番怒っていいはずなんですが、
なんとなくこの子はそういうことをしない気がしていた。
ちょっとどうかと思うくらい自分を卑下して、
それで終わりなんじゃないか、とか思っていた。
だから、「顔も見たくない」なんてセリフ、
聖と同じように一瞬固まってしまった。
でも続く言葉を聞くと、
どうやら私はこの子を見くびっていたらしい。
サクラの存在を知った時から、サクヤはちゃんと覚悟していた。
それはつまり、何かあったら千広はサクラを選ぶ、
そう思って覚悟できるくらいに、千広を分かっていたということ。
あまりに突然だったから竦んではしまったけれど、
結局サクヤは泣かなかった。
思ったよりもずっとサクヤは強かったようです。

サクヤの中でも千広の中でも、おそらくもう道は決まっていて、
誰にもそれを揺るがせることはできない。
そんなことは彼らの周りの誰もが分かっている。
怒る聖も、諌める叔父さん夫妻も、
そして問い詰める奏さんも。
でも彼らはサクヤや千広がとにかく大事で心配で、
一言言わない訳にはいかなくて、それぞれの方法で動く。
それを見ていると、あぁ愛されてるんだなあと、
しみじみ思ってたまらなくなった。
特に叔父さん夫妻の決意は半端なものじゃない。
決めたのならそれを全力で支える、なんて、
この人たちは本当に親になる覚悟をもって、
千広を受け入れたのだと思う。
奏さんにしても出来るだけ人に会いたくないくせに、
サクヤのためなら明らかに気まずくなる会談にも出かける。
他人と他人がこんなにまっすぐに思い合っていることが、
なんだか奇跡のようだと思った。

次はいよいよ最終巻。
それぞれの道を決めたホカンメンバーが、
もう一度一緒に星を見る機会があったらいいと思う。

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