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2011.03.09 (Wed)

イン・ザ・プール


イン・ザ・プール
(2006/3/10)
奥田英朗

「それ」から離れると罪悪感を抱いて、
いてもたってもいられなくて、
精神的に不安定になるなら、
対象が何であっても同じなんじゃないかと思う。

それが神なら敬われて、
プールや携帯なら病院行き。
なんとも世知辛い。

【More・・・】

病院の世話にはできるだけなりたくない。
つけ加えるなら警察と消防も。
もちろん緊急時には頼りにするけれど、
頼らなければならない事態は避けたい。
そして病院の中でも特に行きたくない、
というか通院を勧められたくない科NO.1は、
多分伊良部先生の所属している科なんじゃないかと思う。
行った方がいいと言われること自体が、
精神にダメージを与える気がする。
でも、「いらっしゃーい」と言われてしまえば、
たとえそこが行きたくない場所だったとしても、
そう悪い気はしないものかもしれない。
もしやそれも計算づくか、とか
おそらく外れている邪推をしてしまった。

別に型破りでなくても、
世間には名医がたくさんいるはずですが、
物語の中の名医たちは、
大概どこか一本医者としてのネジが飛んでいる。
真人間すぎる場合も含めて。
だからこそ物語になると言えばそれまでだけれど、
伊良部先生の場合は医者として云々以前に、
一社会人としてかなり異端だと思う。
もっと言えば、大人としてどうかと思う。
それでも少なくとも今回は5人救った。
あらぬ方向へ暴走しかけていた思考回路を、
なおさら加速させることで、
結局は混乱を収束させてしまった。
どういう経緯で神経科の医者になったにしろ、
この男をここに配置した人間は天才だと思う。

伊良部先生以上に妙なのは、看護婦のマユミさん。
この人は変は変だし、かなり奔放だけれど、
先生ほど人の目に無関心なわけではないのだと思う。
「フレンズ」での言動から察するに、
人からどう見られるかについては、
むしろよくわきまえているように見える。
その上で、多分マユミさんは選んでいる。
友だちがいなければ、淋しい。
でも「淋しい」ことは悪いことじゃないし、
それよりも大事にしたいものもある。
ペラペラよく喋る先生に比べると、
かなり無口なマユミさんだけれど、
少ない言葉から彼女について色々考えた。
心の代わりに肌を露出する彼女が気になって仕方ない。

情景で一番笑ったのは「勃ちっ放し」で、
そして残念なことに一番患者に同調したのもこれでした。
世間的に子供でなくなってしまったからには、
そうそう泣き喚いて怒るわけにはいかない。
でも怒らなければならない場面はあって、
怒りはもはや一つの技能になっている気がする。
それがうまく出来ないままに、
下腹部が代わりに怒り出した田口さんは、
きっと怒れない子供だったんじゃないかと思う。
傷つけたくないという思いが強かったんでしょう。
まあ、それは裏返せば、
嫌われたくないという保身なんだろうけれど、
たとえそうだとしても、優しい、と言いたい。
少なくとも、裏切った相手の心を知って、
決心をしぼませてしまう彼は、優しい。
とはいえやはり溜め込むのは良くないので、
定期的に吐き出さなくては。
変なところがはち切れそうになる前に。

助長させてくれる子供が一緒なら、
狂気の道行も怖くないかもしれない。
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