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2011.03.26 (Sat)

インシテミル


インシテミル
(2010/6/10)
米澤穂信

殺すのも殺されるのも、
御免こうむる。
ついでに言うなら、
事件なんか解決しなくていい。

そう主張したところで、
「暗鬼館」は役を振ってくるだろう。
「犯人」「探偵」「助手」あるいは「被害者」?

そこでは誰の命も金に変わる。


【More・・・】

人殺しを容認できてしまう状況なんて、
総じてろくなもんじゃないと思う。
殺すか殺されるかの戦場か、
世情の混乱の中での過ちか。
どちらにしろ歓迎できる状況じゃない。
ましてそのどちらでもないくせに、
「その責はわれわれが負う」なんて、
さらりと言ってしまう「クラブ」に吐き気がする。
どんな力を行使して社会を騙すにしろ、
人間を一人殺した罪が、
殺した人間以外に背負えるはずもない。
大迫や結城自身が何度も言うように、
そんな状況での殺人なんて馬鹿げている。
それでも、人殺しは起きてしまう。
一人どころか、ときには一晩に何人も死ぬ。
恐怖ではなく怒りを募らせていく結城に同調した。

閉鎖された空間での殺人。
それをクローズドサークルということさえ、
終盤にやっと知ったくらいなので、
関係者内に多数いたミステリ読みの仲間入りはできない。
正直に言えば安東よりも推理力は低いと思う。
誰が殺人者か分からない、
いつ殺されることになるかも分からない、
そんな状況でよくみんな頭が回るもので。
逆に命の危険があるからこそ考えられるのか。
なんにしろルールを読んだ後の当初の予想よりも、
ずっと頻繁に「解決」がなされたのが意外だった。
「解決」に失敗したときのリスクを考えると、
もっとみんな委縮するかと思っていたんですが。
まあ「犯人」を収容するのに解決が正しい必要はないので、
恐怖の元を取り除きたい気持ちが勝ったってことか。
確かに疑い続けるよりは答えが出る方が楽だと思う。

監獄の中で岩井が指摘しているように、
ルールといい、理念といい、
この「暗鬼館」はどことなく雑だと思う。
全滅させたかったとしたら、
十二人中半分が生き残ってしまっては話にならないし、
電気の供給がストップして監獄が開くのもミスな気がする。
そもそも「犯人」の決定が多数決なんて、
「主人」が何をしたいのか分らない。
でももしかしたら、その雑さ、用意された穴によって、
「暗鬼館」はさらに異常な空間になったのかもしれない。
実際夜歩きを可能にするガードの穴は、
逆に夜歩きを助長して「罠」を発動させたわけだし、
場合によっては「監獄」が開くことで、
さらに殺人が起こる可能性もあった。
もしも「主人」がそこまで考えてルールを設定したなら、
多分一番の計算違いは結城の真っ当さだったんだと思う。
「犯人」にも「探偵」にも、もちろん「被害者」にも、
どれにもなりたがらないミステリ読みは格好良かった。

一応参加者が実験に応募した情景は描かれますが、
各々の事情の詳細は実験が終了しても不明で、
彼らは最初から最後・最期まで他人だったんだなと思う。
あるかなしかの薄い繋がりはあったけれど、
それは殺人を止めてくれなかったし、
逆に全くの他人であっても殺意は抱けるものらしい。
彼女が大金を必要とした事情が何であったにしろ、
全滅の思惑からは遠いかもしれないけれど、
それでも7日間で6人が死んだ。
殺して殺された者もいれば、
偶然そこにいたから殺された者もいたけど、
6人の人間の死を社会に対して隠蔽するなんて、
生半可なことじゃないと思う。
たとえ死が隠蔽できたとしても、
罪に問われなかった殺人者の存在だけは消せない。
二つのDay afterが悔しくてならなかった。

全員が了承して参加したとはいえ、
殺した者も殺された者にも、同情する。
そして何より真木さんの末路は哀れだと思う。

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