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2011.04.10 (Sun)

パパはロクデナシ


パパはロクデナシ
(2009/12/10)
上村佑

人に迷惑をかけない。
借りたものは返す。
嘘をつかない。

大人が子供に教える常識を、
どこかに置き忘れた父親が出所してきたら、
息子は一体何から始めるべきだろう。


【More・・・】

ナルキッソスほどでないにしろ、
誰しも自分の中に好きな部分はあると思う。
「好き」ではそれこそナルシストのようなら、
それなりの自信と言い換えてもいい。
青春の中に自己嫌悪の塊のような時代があったとしても、
どこかで自分の欠点を許して、
代わりに幾ばくか誇れる部分を見つけ出したはず。
そうしなくては生き続けられない。
端から端まで嫌悪しか感じない相手と、
一生をともにするのは困難でしょう。
などどいうことをこの親父さん、
もとい「パパ」に当てはめようとしたところ、
自己嫌悪だとか自己肯定だとか、
そんなものはこの人には何の意味もない気がした。
佐々木武蔵とナルキッソスが出会ったら、
美青年は尻を蹴飛ばされて水に落ちる羽目になる。

ロクデナシの父親が塀の向こうから帰ってきて、
「僕」の平穏な生活に波乱が訪れる、
というような話だと思っていたら、
間違ってもいませんが正しくもありませんでした。
確かにヤマトの「平穏」はぶっ壊されたけれど、
その点に関しては親父さんが帰ってきてくれてよかったと思う。
父親は刑務所で息子は引きこもりで母親は疲れているよりも、
父親はムショ帰りで息子をダメ道の道連れにして、
母親は呆れたり怒ったりしている方が、
まだ幾分マシだという気がする。
こうやって状況を整理してみると、
殺伐とした暗い家庭に見えてしまうのが不思議に思えるくらい、
ヒトゴロシやマイノリティの話が絡んでいるくせに、
全編にわたってやたら明るくて軽い。
流血も闘病も裁判もいじめもあるのに、それでも明るい。
この親父さんにかかると、
人に迷惑をかけないなんて常識さえ馬鹿らしくなってしまう。
あ、これがこの人と夫婦をやってきた人の言う「麻薬」か。

そんな傍迷惑でめちゃくちゃで、
女センサーをもっているらしい父親から、
なんちゃって不良から引きこもり、
そして「勇者」へ転身するような息子が出来て、
遺伝子の不思議を感じざるを得ない。
いや、よく考えてみれば、
微罪で捕まってヒトゴロシを経て12年社会から切り離され、
出所そうそうに「エセ勇者」になった父親だから、
むしろこの親子は似た者同士なのかもしれない。
あとはヤマトがもう少し女性に強くなったら完ぺきか。
親父さん曰く「男は可哀そうなくらい単純」らしいので、
ナオちゃんとうまくいっているなら、
ヤマトがロクデナシの仲間入りをする日は遠くない。
散々父親のことをコケおろしてきたので、
自分がそうなったなんて認めないだろうけれど。
まあ、そうなったならなった一番気の毒なのは、
二人の「勇者」を支える柱たる母さんか。

乱暴極まりないながら確実な手で、
息子を部屋から引きずり出した親父さんは、
情報屋かつストーカーという厄介な人間と、
復讐しか見えなくなったアーチェリーの使い手の二人を、
息子のときと同じようにド直球の言動で変えてしまったわけで、
そのやり方や言葉には頷けない部分もあるけれど、
少なくとも影響力という意味では半端じゃないと思う。
ただ、安藤にしろ野村の息子にしろ、
完全に現実から切り離されて、
どこか別の次元に生きていた訳でもないんだと思う。
多分二人は、ヤマトも含めて三人は、
自分では足を抜けない場所に入ってしまっただけなんでしょう。
そこまで行ってしまったら優しさには意味がなくて、
相手の腕の一本くらい折るつもりで、
無理矢理引き抜いてやるしかないのかもしれない。
強引で乱暴で、矛盾もたくさんあるけれど、
それができるだけの腕っぷしには素直に恐れ入った。

12年も塀の中だったくせに、
すんなりネトゲ廃人になれるなんてちょっと凄い。

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