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2011.04.16 (Sat)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い


クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い
(2008/4/15)
西尾維新

理解されたいと願うなら、
理解する努力をしなければいけない。

どう足掻いても願っても、
「理解」など叶わないことに、
絶望しながらでも。


【More・・・】

誰にだってできることとできないことがある。
誰にもできないこと、もあるけれど、
何も考えずに心臓を動かすことでさえ、
みんなが当たり前にできるわけではないのだから
誰にでもできることなんてのはない。
できることが多いことと、
できるそのことが世界一であること、
どちらが生きやすいかといえば、
多分前者なんだろうと思う。
かの名曲を思い出しながら考えるなら、
ナンバーワンである人間は、
必ずオンリーワンでもあるんだと、
誰にも代わりが務まらなさそうな天才たちを見ていて思う。
そしてオンリーワンであることは、
同類を見つけられないことは、多分寂しい。
総じてよく喋る彼女たちの笑いは、
「僕」と同じくらい乾いているように見えた。

絶海の孤島という閉鎖空間に集う12人。
そこで起こる連続殺人、欠けていく円卓。
ということで単純に「インシテミル」を思い出しましたが、
状況が似通っていながら、
ここまで雰囲気が遠くなるものなのか、という感じでした。
「天才」のオンパレードな物語は、
個々のキャラクターの強烈な存在感と、
ぶつかったり、高め合ったりでの効果で、
この12人が一緒に食卓を囲めること自体、
ほとんど奇跡的な気がするくらいだった。
その点ではイリアさんの手腕はなかなかなんでしょう。
結局殺人事件になってしまっている時点で、
サロンの運営者としては失格なのかもしれないけれど。
実際のところ個々の天才性は、
玖渚と真姫さん以外それほど発揮されていないので、
画家、学者、料理人がどれほどのものなのか、
それぞれの人格以外見えなかったのが残念だった。
料理人に関しては食べる方にも問題がある気もする。
いや、鑑賞者を選ぶ芸術は芸術じゃない、のか。

二つの首斬りや密室の仕掛けについては、
入れ替わりの入れ替わりまでは思いつきませんでしたが、
大まかな枠組みは見えていたので、
割と冷静にイリアと四人のメイドさん、
あるいは玖渚と「僕」の関係性を追えて、
それだけに過去をもう少し掘り下げてほしかったんですが、
まあそれは以降のシリーズのお楽しみということで。
とりあえず玖渚友は好きになりました。
「僕」が「戯言」という言葉で思考を放棄しながら、
それでも玖渚に関してだけは考えているのは、
半ば以上それが自分に直結することだからで、
要は何だかんだいながら自意識の塊か、とか思うんですが、
玖渚は実際何を考えているのかは分からないにしろ、
少なくともこの子は理解されないことなど問題にしていない。
理解されなくても、自分の存在を相手にどう使われても、
彼女は一人で階段を駆けあがる。
もうそれだけで「僕」は観念すべきだと思う。

冒頭で交わされる会話で問われている定義、
天才とは何なのか、
そして彼らの見ている世界はどんなものなのか。
二つの問いの答えは、
凡人には分からないと言ってしまえばそれまで。
理解できないことも悲劇かもしれないけれど、
理解されず、圧倒的多数の愚か者に囲まれ、
天才性を発揮することだけを期待されるなら、
それは確かに孤独だと思う。
理解されない代表たる真姫さんはじめ、
彼女たちはみなどこか痛々しい。
でもこの種の問いにおいて、
主語が天才である意味はそれほどないとも思う。
「天才」をどんな個人名に置き換えても、
答えは変わらないでしょう。
「僕」が玖渚の見ている世界を見られないように、
玖渚にだって自称凡人の「僕」の世界を見られない。
幸か不幸か、彼女たちの孤独だけは、
多分万人に理解される種類のものだと思う。

誰よりも役者だった三つ子のメイド。
いーちゃんはあかりさん贔屓なようだけれど、
断然てる子さんが気になる今日この頃。

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