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2011.04.17 (Sun)

ゆんでめて


ゆんでめて
(2010/7)
畠中恵

防げたかもしれない喪失。
救えたかもしれない友。
かもしれないを積み重ねた分だけ、
「ゆんでめて」が立ち現れる。

何を選びとっても、
それ以上の数の道が消えるだけ。
分かっていても、人は迷う。
若だんな、惑う。


【More・・・】

後からするから後悔なワケで、
ことが起きる前に悔いるなんて無理な話。
それでもあり得ないもしもを思い、
まだ決まっていない将来までも、
その悔いの餌にしてしまうのが人の性だとしたら、
一太郎にとっての「ゆんで」と「めて」は、
誰にとっても身に覚えのあるものかもしれない。
その点での選択が単純であればあるほど、
後悔には終わりがないものだろうとも思う。
どうして、と思ったところで、
元々が深い理由などなかったのだから、
答えなど見つかるはずもない。
一太郎は何度も悔いて祈って、
やっとこさ失ったことを認めたけれど、
そもそも「ゆんで」と「めて」を探すこと自体が、
過去を消化するための機能なんだなと思う。
自責によって救われることもきっとある。
まあそれで本当に命に関わってしまうのだから、
兄やたちの心配が尽きないのも分かるというものか。

短編を集めた一冊かと思いきや、
これはどちらかというと長編の部類で、
「ゆんでめて」とはよく出来た表題だと思う。
一篇目の表題作も含めた「ゆんで」の四篇と、
「めて」の一篇という構成ながら、
最後の「めて」側の「始まりの日」を読むまで、
二股に分かれた構造に気付けなかったので、
「ゆんで」の物語の底に流れるものが気にかかって、
若だんなの体調と一緒に落ち込んでしまった。
最後に「めて」側も見せてくれたので、
まだ救われた気もするものの、
どちらの道を選んだ未来でも、
若だんなが何かを失ったようだったことが、
「花の下にて合戦したる」のような光景があっただけに、
ひどく悲しいことのような気がした。
普段気にとめないだけで、
たとえそれが右折か左折か程度の選択であっても、
選ぶということは一方を失うことなのだと、
生目神様に突き付けられたように思う。

屏風覗きや織部茶碗のことがあるからでしょうが、
今回の一太郎は全編にわたって怯えている気がする。
花びらの精と別れたときや、
決して兄やたちと同じ時を歩めないと思い知ったときも、
一太郎は失うことの痛みに喘いでいたけれど、
突然身近にいた者がいなくなることで、
半ば冷静な判断力さえなくしてしまったように見える。
傍にいる者を引きとめようとするように、
柄にもなく無理を言ったり、散財したり。
平素は一番彼岸行きを心配されているのに、
いや、むしろだからこそなのか、
他者がそちらへ行ってしまうことを恐れる気持ちが、
この人は人一倍強いのかもしれない。
それでも栄吉や松之助が離れていったときは、
これほどじゃなかったのに。
病弱ながら頑固で割と無茶な一太郎が、
心まで弱っている様はなんだか痛々しかった。

「花の下にて合戦したる」で、
人と妖、神までがともに宴に興じる情景は、
「ゆんでめて」で失う予感と相まって、
桃源郷のようでありつつも、
必ず覚める一瞬の夢を見ているようで一番苦しかった。
「ゆんで」の道ではこれが本当でも、
「めて」の筋では見る前に消えた夢で、
友がいて妖がいて兄やたちがそろっていて、
みんなが楽しそうに騒いでいるこれが、
一太郎の望みかと思うとたまらなくなる。
栄吉との一時の別れのときには、
一太郎も大人になりつつあるんだなと思ったけれど、
理屈を理解して納得したつもりでも、
まだもう一つ脱し切れていないままなのかもしれない。
まあ、気の強い娘を思って顔を赤らめるくらいには、
成長してきているんだろうとは思うけれど。
「めて」ではもう一言かけられるか、否か。
妖連中の間で一賭け起こりそう。

最新刊だと思って読んだんですが、
どうやら生目神様のところを読んでない…。
「ころころろ」に戻らなくては。

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17:36  |  畠中恵  |  TB(1)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

面白くて和めるところ、これがこのシリーズのいいところだと実感します。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
藍色 |  2011年10月14日(金) 17:37 |  URL |  【コメント編集】

●Re: タイトルなし

コメント・トラックバックありがとうございます。
確かに家鳴りや一太郎の成長にいつも和まされますね。
シリーズ全体にとってこの巻は一つの分岐点になるのかもと思います。
あこん |  2011年10月14日(金) 22:06 |  URL |  【コメント編集】

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