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2011.04.20 (Wed)

フルメタル・パニック!7 つづくオン・マイ・オウン


フルメタル・パニック!7 つづくオン・マイ・オウン
(2004/10)
賀東招二

積み上げてきた日常は、
唐突に崩れ去る。
欠片を拾い集めることさえ、
忘れてしまうほど徹底的に。

守るために諦める少女と、
諦めないために守ろうとする少年は、
瓦礫を挟んで立ちつくす。


【More・・・】

集団の中の異物を排斥する動きは、
悪意が悪意になる以前の段階で、
生き物の機能として起こる。
違うと認識された瞬間に、ほとんど自動的に。
だからといってそれが肯定されていいワケもなく、
その後に続く悲劇を抑止するために、
教育や法律、その他のあらゆる分野で、
たくさんの努力がなされてきて、
少なくとも表向きそれは効果を上げている。
でも、危機に追い詰められて、
思わずまくしたてるかなめを見ていると、
本当に恐ろしいのは排斥されることではなく、
そもそも自分が「異なる」ことに、
気づいてしまうことなのかもしれないと思う。
自分が周囲と違うと気付いたとき、
心は勝手に周りの人間を排斥しようとする。
たとえどんなに彼らを愛していても。
必死にかなめの言葉を否定する宗介と、
諦めの中に沈んでいくかなめのやりとりが悲しかった。

「踊る…」が割と軽いノリだったので、
なんとなく油断していたかもしれません。
冒頭の墓参りのシーンは緊迫していたけれど、
その後の生徒会選挙でも「☆」とか散ってるし。
まさかいきなりこうも話を動かしてくるとは。
短編でのエピソードも考え合わせると、
林水会長の指摘はあまりに的を射ていて、
らしくない必死さで言葉を重ねる宗介に、
それこそ命を懸けて守ろうとしてきた日常を、
この男がどれほど想ってきたのかが透けるようで、
会長が正しいことは分かっていても、
つい、言わないでやってくれと思ってしまった。
会長が指摘しようがしまいが、「限界」がきているのなら、
どうにもならないことも分かっているけれど。
具体的な実情を把握していないのに、
宗介の迷いや背負っているものを察し、
「頼み」を二つ返事で引き受けて、別れを言う会長。
今までとは違う意味で、ただ者じゃないと思った。

なんだかんだで勝ってきたミスリルにとって、
今回さらされた攻撃は過去最悪のはずで、
組織全体がほとんど壊滅寸前まで追い詰められている。
のっけから負け戦の様相で、
頼むから誰も死なないでくれと念じつつ、
多分そうはいかないんだろうなと感じながら読んだ。
奇跡のような逆転劇や天の采配などないまま、
泥まみれの汗まみれの血まみれで、
火薬の匂いと確かな苦痛の中で人が死ぬ。
死の足音の前に人の心は乱れる。
長編七冊目にして今さらかという感じだけれど、
彼ら、あのテッサや愛すべき者たちみんなが、
等しく戦争の中にいる、
つまりは死を傍ら置いているのだと気がついた。
そしてテッサの責任と覚悟の重さに、
思わずクルーと一緒に敬礼したくなった。
施設に組織にそれからそのクルーに、
たくさんのものを失ったけれど、
反撃の要たるダナンが残っただけほっとした。

何度かの綱渡りな戦闘と、
おそらくはその間のたび重なる訓練を経て、
まるで人と人が距離をつめるように、
連携を強化してきた宗介とアル。
メリダ島のマオやクルツも心配でしたが、
アーバレストが東京に降下してきてからは、
宗介の安全よりもこの人間味あふれるASが、
無事にこの危機を生き延びてくれるかどうか、
そればかりが気になってしまった。
アルをあくまでASのAIとして扱っていた頃なら、
「除隊」なんて言葉宗介にはあり得なかっただろうな、とか
データに基づく「予測」でも「推測」でもなく、
「予感」という言葉を選ぶアルの成長とか、
涙腺ががたがたでどうしようかと思った。
ミスリル自体がこんな状態なので、
おそらくあのアーバレストは戻ってこないんでしょう。
幸いにしてマオやクルツが欠けなかっただけに、
アルの大破はあまりに痛かった。

どうやら短編7・8から読むべきだったようなので、
先が気になる気持ちをぐっと抑えて、
しばし平和な学園に戻ることにします。

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