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2011.05.14 (Sat)

炎の蜃気楼35 耀変黙示録Ⅵ 乱火の章


炎の蜃気楼35 耀変黙示録Ⅵ 乱火の章
(2002/7/26)
桑原水菜

あらゆる自由を奪われて、
何もなくなったと思っても、
最後の最後まで残るはずの場所。
誰にも平等に与えられた聖域。

けれどかの魔王は、
その最後の自由さえも許さない。

【More・・・】

家族から離れ一人暮らすようになって、
初めて私的な空間を手に入れるまで、
トイレくらいしかそれがないことに、
特に不満もなかったくらいなので、
自分はそれほどプライベートなるものに、
こだわりがないのだと思っていたけれど、
絶対的に私的な領域というものを
最初から誰もが持っているのだということに、
種を植えられて悶える直江を見ていて気がついた。
「サトラレ」でもない限り、
そこは決して他人に侵されることのない部分のはずで、
そうであるからこそ思考は自由だと言える。
魔王の種は身体の自由も許しはしないけれど、
本当に恐ろしいのは、やはり思考の方だと思う。
自分の内側にあるものに対する人間の羞恥心は、
暴かれては正気を保っていられないほどなのかと思うと、
全く不便というか、面倒な生き物な気もする。
誰よりも憎い相手に心の全てを読まれて、
それでも目的を設定できる直江は単純にすごい。

対立の構図としては、四国vs安土城なんですが、
こうやって書いてみると、
今さらながらびっくりの状況だなあ。
今回はあまり表面には出てきていませんが、
これにプラスして現代人という項もあるので、
一体どうなってるんだ、という感じの闇戦国。
いや、四国が現浄土になった段階で、
もう大分前に闇戦国ではないんだけれど。
そんな中で綾子がやろうとしていることや、
その行動原理を見ていると、
なんだかひどく懐かしくなってしまった。
あの滝の前での戦闘のとき、
半ば操られた状態ながら本気で調伏を行おうとしたのが、
おそらくこの人の本当なんだろうと思う。
今回は種のせいでそれを行ったわけだけれど、
もしも信長が綾子の中にあるその想いを読んで、
それに乗っかる形で利用しているのなら、
それは必ずしもひどいことではないのかもしれない。

ただでさえ肉体と魂が一致しない状態のオンパレードだったのに、
魔王の種やら死返りやらでさらに混線し、
その上一つの身体に二つの魂という状況もできたりして、
頭の中でこれが「誰」なのか整理しながら読みました。
司というかカオルがややこしくてならない…。
現代人はかの弥勒さん以外一致しているので、
テルさんや隆也の言葉を聞いていると、
これが「生きている」人間なんだなあとか思う。
死の記憶をもたずに生きているからこそ、
何の打算もなく「死ぬな」と言えるし、
恩人に死が迫っていることに動転することもできる。
高耶も嶺次郎も信長も、
それぞれに生と死に対する考え方は違うけれど、
誰にしてもどこかでやはり「次」を思っている気がする。
今使っている身体はそもそも自分のものではないのだから、
それは仕方がないことなのかもしれないにしても、
今回の隆也の決意と必死さを見ていると、
自分の身体と魂で生きることは絶対的に正しい気がした。
怠惰なんかではないぞ、兵頭。

カオルの煩悶も生半可なものではないと思うけれど、
兼光晋吾の最期はあまりに悲しかった。
信長が一度死んだ人間に与える苦しみは、
どの場合も何割かは本人にも責任がある。
兼光晋吾はその自分の責任という部分を考えて、
償いをしようとした、という面もあるだろうけれど、
本当は責任なんてものはほとんどなく、
終始利用されていたということを認めてしまう前に、
せめて命の終わりだけでも、
この人は自分の手の中で行いたかったのではないかと思う。
カオルに怒りと憎しみを忘れてしまったのかと迫るのは、
かつて異国でそうして忘れて生きていた自分と、
復讐を掘り起こされて人殺しになった自分、
その両方を憎悪しているがゆえだったのかもしれない。
自ら命を絶つことはいついかなるときも、
肯定してはいけないことだと思うから、
利用され尽くして消されるよりも、
もしも兼光が幸福だったのなら、それが悲しい。

思わぬところで出てきた色部さんとか、
まだ崇徳院を抑えてるらしい千明よりも、
ズドンとやられた風魔が気になる、
どこまでも小太郎びいき。

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