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2011.05.21 (Sat)

夏目友人帳 11巻


夏目友人帳11
(2011/3/4)
緑川ゆき

どれほど今が幸福でも、
痛みは忘れられたとしても、
傷はなかったことにならない。
欠落は埋まらない。

それでも、
その傷を知っていてくれる者が、
傍にいてくれるなら、
同じ傷を負うことだけは避けられる。
きっと。なあ、夏目。


【More・・・】

自分が生まれた日のことや、
そこから数年間の出来事を、
自分自身の記憶として持つのは、難しい。
生まれた日がいつなのかという単純な事実さえも、
人づてに聞くしかないのが普通だけれど、
それを語って貰えるのはとても幸福なことで、
そうされることによって、
自分の起点がどこなのかという不安と、
人は折り合いをつけられるのだろうと思う。
夏目の父親もきっとそれを語ったはずで、
幸福な時が夏目にもあったことが嬉しかった。
でもその語られた記憶もまた、
あまりに儚くて、ほとんど幻想のようになっている。
もちろん夏目にとって今大切なのは、
過去よりも今そばにある温かさのはずで、
痛みを忘れようとすることは間違いだとは言えない。
それでも、第四十四話の夏目の表情は、
嘘に慣れ過ぎた最初の頃のようで悲しかった。

孫の夏目がいるということは、
レイコさんもどこかの時点で人を愛せたのだろうと、
なんとなく希望的に考えているんですが、
そのレイコさんの娘である夏目の母親のこと、
というより両親のことは、
今まで不思議なほど話に上らなかった。
でも今回の夏目のごく小さい頃の話を読むと、
この少年がどれほどの努力をして、
痛みを忘れようとして、そして忘れたのか、
それほどのことをしなければ日々を過ごせないほどに、
どれだけの深さで両親を想っていたのか、
はっとさせられた気がする。
レイコさんやその痛みに想いを馳せるときも、
夏目は苦しそうな顔をするけれど、
それは彼女が自分に近い境遇だったからで、
おそらく肉親を思うのとは違うのだろうと思う。
レイコさんをばあちゃんと呼ばない夏目が、
「お父さん」と繰り返す姿に胸が苦しくなった。

大切な人々を守りたいと思うあまり、
その相手から心配されたり、ときに怒られたり、
そうしてタキや田沼に何度も諭されて、
やっと夏目も自分が見ているもののことを、
ごまかさずに話せるように、
少なくとも話そうと思えるようになったのだと思う。
夏目の様子から事情を察してくれる田沼も、
「もちろん」と即答してくれるタキも、
二人ともの存在が心強かった。
まだまだ夏目には言葉が足りないし、
先に行動から入ってしまうことも多いけれど、
タキが言っているように、
その背後にあるものを知っていれば、
知っていてくれる人間が傍にいれば、
どんな結果になったとしても、
夏目が一人で傷つくようなことはきっとなくなる。
ニャンコ先生の庇護も大事だけれど、
本当の守りは、見えているものさえ共有できないのに、
傍にいてくれるこの二人なんだろうと思った。

見えることが出会いであるというのは、
夏目も否定することじゃないとは思うけれど、
それでも過去の諸々を考えると、
そうであることは歓迎できないんでしょう。
タキのお祖父さんが生涯それを望んだのは、
自分が知らない世界に対する憧れで、
それが叶わないがために起こるすれ違いは、
なかなかに悲しいものがあったけれど、
感じるだけの田沼と、条件つきで見えるタキが、
夏目の肩口を凝視するのは、
つまるところ夏目を理解したい、助けたいという、
傍から見ていてこっ恥かしいほどの想いからきていて、
必死そうな二人の表情がほほ笑ましかった。
普段は、人など、という口調で話すくせに、
陣に入らなかった妖にニャンコ先生が苛立たしげなのは、
夏目と触れ合うことで、
変わりつつある自分を自覚しているなのかもしれない。
なんかもうこの回はみんな可愛いなあ全く。

それぞれの幼少時代のカット。
みんな愛いけれど、特に田沼のが…。
言うだけ野暮か。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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