2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2011.05.28 (Sat)

つくも神


つくも神
(2004/11)
伊藤遊

作られ使われ捨てられる。
それが宿命の存在だから、
ひと時でも大事にされたというだけで、
人を愛する理由は
彼らには十分なのかもしれない。

なんて愛すべき存在だろう。

【More・・・】

年齢を重ねるにつれて、
できることの幅は広がっていく。
自分でお金を稼ぐようになり、
絶対的な誰かに指図されることは減り、
時間は自分で作るものになって、
責任とともに自由は増える。
そういう意味で確実に世界は広がる。
自宅であるマンションと学校、
それからお隣の古い家。
それらの間だけで生きているほのかの世界が、
だからと言って狭くも感じないのは、
おそらく広い場所で生きる大人と、
狭い範囲で暮らす子供の間に、
決定的に見えているものの差があって、
色彩や感覚の豊かさを比べると、
大人に勝ち目がないからかもしれない。
お昼ご飯食べにうちに帰らなきゃなんて感覚、
なんだか懐かし過ぎて笑ってしまった。

お兄ちゃんはグレるし、友達とはうまくいかないし、
マンションは陰気で嫌なおばさんはいるし、
ほのかが頭を抱える問題は、
他人から見たら大したものじゃないけれど、
家と学校の両方がギスギスしているというのは、
そこにしか居場所がない状況なら、
ほとんど死活問題だと思う。
思うけれども、ほのかは少し周囲に頼り過ぎな気もする。
困ったことや怖いことがあると、
すぐにお母さんやお兄ちゃんに助けを求め、
それで分かって貰えないことを不満に思ったりする前に、
自分で考えて行動に移したり、
それが難しいのなら、
せめて心配をかけないよう黙るか言葉を選べばいいのに、
などとガキの頃の自分を棚に上げて思った。
それにしてもほのかは由美を責められない。

ほのかのふがいなさに比べると、
お兄ちゃんたつ雄一はしっかりしていると思う。
龍平に引きずられながらも、
意思の力で自分を立て直して、
その上妹の話に耳を傾け、友を見捨てないなんて、
なかなか将来が楽しみな少年だなあ。
兄妹のお母さんもあまり感心できた人じゃないけれど、
お父さんは息子のことがよく見えている。
一時はバラけかけても、
この家族はこんな風に保たれていくんだろうという気がする。
傷を負って自由が利かなくなっても、
ネツケをはじめとするお隣のつくも神たちが、
きっとときどき子供たちを助けてもくれる。
まあ蛙の根付とキセルと風呂敷では、
そうそう頼る場面もないかもしれないけれど。

つくもかみ貸します」でのつくも神は、
常に人を小馬鹿にしたところがあったけれど、
大野のおばあちゃんの蔵に住む物たちは、
基本的に人間を好いているのだと思う。
キセルとフロシキは龍平や雄一に厳しいけれど、
それはまるで大人が子供を想うようなやり方で、
突き飛ばされても忘れられても、
ほのかを信じるネツケだけでなく、
ショウキもウスも人というものを愛しているように見えた。
ネツケが元の持ち主の医者を真似ているように、
おそらくキセルとフロシキは、
自分たちを好いてくれた二人の子供に影響を受けている。
もしかしたら物が「つくも」になるためには、
ただ単に長い年月を経るだけでは十分ではないのかもしれない。
人に愛され尊ばれ、頼られて初めて、
ただの物が魂を持つのだとしたら、
彼らが神と呼ばれる理由も分かる気がする。

自ら動いておばあちゃんを助けるだけでなく、
味噌作りまでこなしてしまうウスが可愛かった。

スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


13:35  |  あ行その他  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/327-5c31912e

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |