2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2011.05.29 (Sun)

クロへの長い道


クロへの長い道
(2003/2)
二階堂黎人

真実を知るために、
必要なものはライセンスじゃない。
もちろん年齢も立場も関係ない。

常に分をわきまえて、
真摯である覚悟さえあればいい。

渋柿信介(6歳・探偵)には、
その資格がある。


【More・・・】

これは職業ではなく生き方である、と
そんな風に格好つけられる職は、
言うまでもなく多くない。
というかそんな格好のつけ方をするには、
かなりの覚悟が必要な気がする。
その数少ない職業であり、
格好をつけられる市民権も持っているのが、
探偵というやつなのかもしれない。
もちろん現実の探偵業というやつは、
刑事といがみ合ったり逆に頼りにされたり、
頭脳だけで颯爽と事件を解決したりもしないし、
そういう機会もない仕事でしょう。
だからここで言う「探偵」は、
あくまで事件ありきで存在する物語の要素で、
その存在を強く「事件」に依存するという意味で、
確かにそれは生き方そのものなんだと思う。
6歳児でも愛車が三輪車でも、
渋柿信介(6歳)は立派な「探偵」だった。

かの名探偵コナンの頭と身体の年齢差は、
せいぜい10歳くらいでしょうが、
信介のそれは軽く30歳は越えている気がする。
別に怪しい組織にクスリを飲まされてもいないし、
血と硝煙に包まれた壮絶な過去もないけれど、
明らかにこの子はハードボイルドを生きている。
しかも幼児が大人ぶって格好つけているのではなく、
普段は「ボクね」などと言って、
ちゃんと幼稚園児としての役割を全うしながら、
頭の中は冷やかに、かつ慈愛をもって、
友人たちや大人を観察しているという強者。
もしもそういう「シンちゃん」に、
両親が騙されているような家庭だったなら、
この話はこんなに笑えなかっただろうなと思う。
父・ケン一も母・ルル子も、
親としてはかなりどうかと思うけれど、
6歳児の前で殺人事件の詳細を語るわ、
ルル子に至っては裏をとる手助けを息子に依頼するわ、
全く、なんて愉しい一家だろう。

誘拐や殺人事件があるかと思えば、
いなくなったペット探しもあったりで、
なんとも探偵物語らしい構成だった。
仮にも幼稚園児が主人公なのらから、
さすがに血なまぐさい事件は扱わないだろうと思っていたら、
待ったくそんなことはなく、
4篇の中で信介は少なくとも2回死体と対面している。
しかも別に初めてでもないようで、
「ここは場馴れした僕が」などと思っているくらいだから、
一体今までどんな経験をしてきたんだろうと、
この子の将来が若干心配になった。
そのくせ報酬がピカチュウ・パンその他の菓子なのは、
別段無理に幼稚園児ナイズしているわけでもなさそうだし、
本当に一体どういう子供なんだ、渋柿信介…。
殺人事件に関わってしまったとき、
彼は積極的にそれをどうにかしようとせず、
本来の依頼(イグアナ探し)の方を優先したけれど、
そのスタンスはなんとも分をわきまえていて、
他所で活躍する「名探偵」たちにも見習ってほしいと思った。

幼稚園児の日常とルル子さんのテンションのおかげで、
かなり緩和されてはいるけれど、
4篇目「八百屋の死にざま」は、
なかなかにやるせなくて、怖い話だった。
警察や探偵が事件を「不可能犯罪」と見たのは、
そうであってほしいと願う無意識に原因があって、
その意識をもっていない人間からしたら、
事件はとても単純で、なんのひねりもない。
もしも犯人が自白しなかったなら、
善良な捜査側の人間は決して真相に辿りつけなかったのかも。
何よりやりきれないのは、
決して犯人がそうなるよう計画したわけではなく、
「場」とそれに属する人間が、
彼をそんないるはずのない犯人にしたことだと思う。
それでも人を殺したのは他の誰でもない彼。
その罪は一人で背負うしかない。
刑事だけでなく、探偵にも出来ることはない。

幼稚園児探偵の活躍と一緒に、
元アイドルのミステリ狂・ルル子さんの活躍も、
もっと読みたくなった。

スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


02:17  |  な行その他  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/328-09e42171

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |