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2011.06.14 (Tue)

ひとたびバイクに


ひとたびバイクに
(2008/2/16)
山田深夜

風を切って雨をはじいて、
彼らは走る。
肺が吐く熱い息の代わりに、
鉄馬が排気をたなびかせる。

旅が彼らを呼ぶ限り、
ライダーたちは愛馬を駆るだろう。


【More・・・】

鳥のようには飛べないから、
頭をしぼって飛行機なんてものを造り、
魚ほど息は続かないから、
船を潜水艦を造ったのだと考えるなら、
バイクというのはおそらく、
見たまんま馬なのだと思う。
人が馬に乗っていた時代も長いけれど、
現代で馬を移動手段にするのは難しいし、
そもそもあの獣に乗ったところで、
走れる距離も早さも最終的には馬次第。
でもバイクならそれを自分で決められる。
体調を整えるようにメンテナンスを重ね、
より遠くまでより速く走れるように、
運転の技術を磨くことで、
駆けることの快感を自分のものにできる。
乗った経験もなければ興味もなかったけれど、
鉄馬の魅力とライダーたちの愛には感じ入った。

基本的に家にいたいインドア野郎としては、
旅を愛する人々の気持ちはいまいち分からない。
どこか遠くへわざわざ行くとしても、
それは目的とするものや場所があるからで、
旅そのもの、その移動の過程自体には、
やはりあまり意味を見いだせなかったりする。
そんなわけで旅そのものの魅力は理解できないけれど、
旅人というものには大いに興味がある。
惹かれていると言ってもいい。
それは自分には理解できないものを人生にしている者や、
根をもたずに生きられることへの憧れなんでしょう。
たとえそれが余暇を利用した一時的な旅であっても、
どこか特定の場所ではなく、
旅の道程自体を愛せる人間というのは、
なんとなく格好いいような気がしてしまう。
まあ要は自分にないものを数え上げてるだけなんですが。
あれ、なんで落ち込んでるんだろう。

紀行文も含めて二十三篇のどれもが、
旅、しかもバイクでの旅の話ばかりで、
この人はよほどバイクに魅せられてるんだなと思う。
まあ掲載誌が「アウトライダー」なので、
当然といえば当然なんですが。
それにしてもバイクにつぐバイク。
機種のことは全く分からないので、
完全に語感と乗り手の印象で外見を想像していて、
おそらく実際とは大いに差があるんだと思いますが、
これだけぐいぐいバイク押しでも、
物語の骨子は人にある、はずなので、
思いきって途中からその辺は気にしないことにしました。
そうやって見渡してみると、
やはり旅というのは目的ではなく、
手段なんだなという気がした。
余暇だけのライダーも人生を捧げた者たちも、
停車したとき、あるいは駆けている最中も、
誰かとすれ違って何かを交わす。
多分彼らの旅はその瞬間のためにある。

どの話もさわやかでロマンにあふれていて、
こんな出会いがあるのなら、
一人旅もやってみたいような気がする。
もちろん現実のバイク旅には、
苦労が絶えないんだろうし、
旅の御空で人情が身に沁みるのは、
それ以上の不人情に接しているからだと思うけれど、
過去と今を一緒にしたような「たむけ」の一瞬や、
「あまあがり」のような奇跡が、
もしかしたらあるかもしれない。
あるかもしれないと思えるくらいには、
物語の中の誰の想いも身の丈にあっている気がした。

どこか遠くへ、ではなく、
もっと遠くをただ目指す彼らが眩しかった。

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