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2011.07.20 (Wed)

夏目友人帳12巻


夏目友人帳12
(2011/7/5)
緑川ゆき

庇うだけでは、守ったことにならない。
想うだけでは、無力は埋められない。
二人はそれをよく分かっている。
でも、ではどうすれば?

大事なものを大事に思うがために、
不自由になっていく少年たちが愛おしい。


【More・・・】

守るべきものは、往々にして主人公たちを強くする。
殺伐とした事情だけを抱えるときよりも、
誰かを背に庇うときの方が、
耐えられる痛みは大きい、そういう風に描かれる。
母は強しと、それは同じ文脈なのだと思う。
けれど夏目は弱くなったように見える。
そもそも何と戦っているわけでもないので、
強い弱いという言い方が適当でないなら、
不自由になったと言ってもいいかもしれない。
守りたいもの、大事なものが増えて、
彼らを想うほど、心も体も思い切れなくなって、
出来るはずのことまでままならない。だから疲れる。
でもそれは誰かを大事に思うと同時に、
その誰かに大事に思われていることを、
夏目が自覚し始めた証なのだと思う。
そのために悩んで身動きできなくなったとしても、
身を盾にすれば誰かを傷つけずに済むなんて、
そんなことをただ信じているよりは余程いい。
夏目はもっと不自由になるべきだ。

人とは違う時間を生きる妖たちは、
人の時間が終わった後も長くこの世に残って、
後悔や勘違いを続けていく。
問答無用で人が彼らをおいて逝くために、
妖たちの想いは途切れることがないのだと思う。
夏目が友人帳にある名を妖に返すのは、
祖母の遺品に始末をつけるという、
いわば故人の過去の整理なのだと思っていたけれど、
ヨビコやおばばのように、
一度できた人との繋がりを振り切れないまま、
同じ場所に止まっている妖にとっては、
いや、単に喧嘩を売られて名を奪われた者にとっても、
名が戻り記憶を正されること以上に、
孫である夏目の存在によって時の流れを思い知ることは、
過去をちゃんと過去にして、
長い時間の中、次に踏み出すために、
どうしたって必要なことなのかもしれない。
レイコさんやあの女性の痛みはなかったことにならないけれど、
少なくとも、今そこにいる妖を前に進ませてやれるなら、
夏目が毎回ぶっ倒れる甲斐は十分にある。

田沼が夏目を大事に思うのと、
夏目が田沼を特別に思うのとは、
少しベクトルが違うのかもしれない、と
今回田沼を見ていて思った。
見えること、感じることを隠さなくていいというのは、
どちらにとっても革命的なことなのだろうけれど、
親父さんという理解者もいる田沼にとって、
夏目の存在の大きさは一体何なのかという気はしていた。
姿も見えず、声も聞こえないというのに、
夏目の助けになりたくて動かずにいられない田沼は、
多分夏目が「理解者」だから懸命なのではない。
名取さんに反射的に答えているように、
ただ夏目が友人だからというそれだけなのだと思う。
自分にとって特別だから友人なのではなく、
友人だから、助けたいし、頼ってもほしい。
さし向かいで座る相手が自分を見ていなくても、
相手の見ているものを想える心を田沼はもっている。
危険を感じていないわけでもないのに、
厳しい表情で名乗る少年をまた好きになった。

名取さんやレイコさんが諦めたものを、
夏目が捨てずに歩き続けるためには、
おそらくまだまだ越えなければいけないものがある。
田沼にタキに、塔子さんに茂さん、
それから西村や北本その他大勢。
全員に全てを話す必要はなくても、
たとえば田沼がレイコさんや祓い屋のことを知っていたなら、
夏目も田沼もあそこまで自分を責めたりしなくて済むし、
もっと安全な動きもできたかもしれない。
話すことで大事なものに類が及ぶのに怯えて、
秘密の内に全部背負いこもうとするクセだけは、
夏目はいい加減どうにかした方がいいと思う。
隠されているものがあると気付いたくらいで、
幻滅するような田沼ではないだろうけれど、
守りたい思う余り距離を保とうとする夏目の態度は、
確実に田沼を傷つけているし、
タキがそこにいても同じことになったはずで、
もう隠し通す段階は過ぎている。
次巻は的場さんが来るようだし、
夏目には一覚悟決めてもらいましょう。

妙ににこやかだったり、
蔑む目で命令口調だったり、なんて
本人が絶対しないだけに大変楽しかった。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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