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2011.07.23 (Sat)

コップクラフト3


コップクラフト3
(2011/1/18)
賀東招二

一部の美学には反するかもしれないが、
一生に一度の往生際くらい、
足掻いたって罰は当たらないと思う。

いわんやその足掻きが、
本当に生き残ることに繋がるのなら、
足掻かない方が嘘だ。

異界の誇り高き騎士サマも、
地球人ナイズ、
あるいは風紀班ナイズされつつある模様です。

【More・・・】

日々を平和に過ごすという、
ただそれだけのためでも、
諦めなければいけないものは沢山ある。
それによって得られるものが、
諦めたものと等価であるかどうかは、
おそらくそうと決めた本人にしか分からない。
ナイアスは生き延びるために選択をした。
文字通り、一つの世界を諦めた。、
でもあまりに痛いその最期の姿を見ていて、
諦めると決めて、そうしたつもりでも、
本当に何かを諦め切るのは、
そう簡単なことじゃないのかもしれないと思った。
ナイアスはセマーニ人としての自分も、
同年代の少年少女にとっては当たり前の喜びも、
全部諦めたつもりで、諦められていなかったのだと思う。
だからノルネのために動かずにはいられなかった。
希望を求めただけであんな最期を与えるなんて、
ルバーナ神もそこらの神と変わらない。

ティラナの高校編入、
しかも角で美少女転校生とぶつかって…とか、
テンプレにも程があるイベントをやってきたので、
学園ラブコメとまではいかなくても、
今回は全体に軽いノリでいくんだな、と思ったら、
いきなりの爆発炎上、失踪、錯乱、
そして学校での虐殺とあんまりな真相…。
これだから賀東さんはやめられない。
まあ、ティラナが潜入することになったのは、
ノルネという少女の死がきっかけで、
最初はよくあると言ってしまいそうになったものの、
後半にかけて具体的に描写されると、
彼女の死の在り様は目をそらしたくなるほどで、
しかも更に裏の事情まで鑑みると、
救いようのなさに大きく嘆息するしかないわけで、
そんな風に始まった話がラブコメなわけもないのは道理か。
それでもマトバの酩丁とか着せ替えティラナとか、
ばっちり挟み込んできて、大変楽しかったけれど。

地球世界にやって来ているセマーニ人というと、
1の最初でマトバが蹴散らしたガキどもや、
あるいは術を使って悪事を企む輩、
それからティラナくらいしか例がなくて、
セントテレサに多くいるらしい、
普通のセマーニ人がどんななのか、
いまいちイメージできてなかったんですが、
結局は風紀班絡み、つまりは事件に絡んでいるので、
それほど一般的とは言えないまでも、
ナイアスのように学校に通っていたり、
ノルネの父親のように政界に進出していたり、
セマーニ人が地球世界でどういう風に生きているのか、
少し見えてきた気がします。
モダ・ノーバムが歪みながらも目指したものも、
銃口を向けながらナイアスが考えていることも、
根本的には同じ背景をもっていて、
だからこそその間にいるノルネという死んだ少女の存在が、
導いてしまった結末が、やりきれない。

妹の死についてマトバが負っているものは、
本人が一番分かっている通り、負う必要のないものだし、
ふとすると死者に負わせてしまうものも、
同じように筋違いの責任転嫁でしかない。
自分の手の届かないところで、
大事な人間を殺されてしまった点で、
ナイアスとマトバは共通のものを持っていて、
同じセマーニ人として、同年代の者として、
直観的にナイアスに心を映しみていたティラナより、
あるいはマトバの方が、
少年の痛みを自分に近く感じていたのかもしれない。
生き残るのがモダやエマのような人間で、
死ぬのがノルネやナイアスであることは、
いみじくも錯乱したマトバの言葉を借りるなら、
「警官である前に人間」として納得できないとも思う。
それでも全てを飲み下して、自ら引き金を引き、
ティラナが手を下さずに済んで良かったと思うなんて、
マトバの刑事ぶりと何より男ぶりには頭が下がった。

ナイアス…!と肩を震わせた瞬間を、
数ページ後に台無しにしてくれたイリーナ嬢が大好きだ。

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