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2011.08.23 (Tue)

世界平和は一家団欒のあとに4 ディア・マイ・リトルリトル・シスター


世界平和は一家団欒のあとに4 ディア・マイ・リトルリトル・シスター
(2008/4)
橋本和也

自分のことにさえ不器用な少女は、
守るべき五人の弟妹たちのため、
お姉ちゃんに「なる」ことを、
ある日決めたのだと思う。

酔いどれ魔女でも、
妹が銀河系最強でも、
お姉ちゃんは、お姉ちゃん、なのだ。


【More・・・】

過去に戻ってやり直せるなら、
まだやれることはあるかもしれないけれど、
体だけが時間を遡って若返ったところで、
おそらくできることはそう今と変わらないと思う。
さらに、かの名探偵が色々と苦労しているように、
十代後半ならまだしも、それより前、小学生以下の体では、
どうしたって運動能力は制限されるし、
そもそも色々なサイズが足りないし、
小さいというだけで大人に止められるしで、
彩姉えの苦労はさもあらんという気がする。
でも、そんな不自由や小さいが故の屈辱を飲んでまで、
孤高の姉ちゃんが目を背けたかったものは、
おそらく大半の大人にとって覚えのあるもので、
ひらがなで喋る彩美さんを見ていて切なくなった。
みんなのお姉ちゃんとしての彩美さんと、
迷いの中で必死に踏ん張っていた学生服の彩美さん。
現在と思い出が交差する中で、
どちらの黒髪の彼女も凛として美しかった。

今まで彩美お姉ちゃんといえば、
酔って帰ってきて介抱されてるイメージ。
そうでなければ、悪の組織やら異世界のヒーローやらと、
若人組が戦っているのをちょっと横で見守りながら、
がんばれーと軽く手を振っている感じだったので、
正直に言って彩美さんで一冊もつのかなと思っていたら、
彼女の青春時代と現在にまつわる物語は、
予想以上のセンチメンタルと純情の積み重ねで、
小さい云々ではなく可愛くて仕方なかった。
前回帰ってきたお父さんがお父さんを「やって」いたように、
下の子たちとの距離を測りあぐねたり、
それ以前に「魔女」たる己がどうあるべきなのか悩んだり、
お姉ちゃんもお姉ちゃんになるために必死だったようで、
そうやって一人一人が自分の役割を果たそうと、
頑張っている星弓という一団がもうなんだか愛しい。

お姉ちゃんの青春時代は、
仲間と力を合わせて悪者からみんなと世界を守るという、
多くの中学二年生にとって夢のような状況そのもので、
しかもそこに初恋だの裏切りだのが絡むとあっては、
彩美さんには申し訳ないけれど、
少しばかり羨ましくなってしまいました。
一方で、この世界ではほぼ最強の魔女である彼女とは違って、
ただ追われ、排斥される存在である愛華は、
青春の甘酸っぱさや輝きとは無縁の存在で、
彼女の行動の基本になっている怯えが、
あまりに痛々しくてならなかった。
星弓家にヒーローの役割を振ったように、
どこか上の方にいる誰かさんが愛華にそういう役割を振ったのなら、
そんなものは星弓家内での役割とは全く違って、
ひどくおぞましいものである気がする。
まあ、振られた役割の範囲内で、
互いにとっての最良の決着点を探すのが我らがヒーローなので、
愛華のこれからもそう暗いものではないとは思う。

軋人が彩美お姉ちゃんの背中を見て育って、
結果、ああいう粗雑な高校生になったというのなら、
七美があんななのも一割くらいは彩美さんのせいかもしれない。
残り九割は性分だろうけれど。
ただ、星弓家の兄弟のように人数が多いと、
親の背中より上の子の背中の方が近いということもあるんだなと思う。
そういえばヤマシタさんの短編でも、
六人くらいの兄弟がごちゃっと暮らしてる話があったけれど、
あれも上の子がほとんど下の子の親になっていて、
お姉ちゃんだから、お兄ちゃんだから、と
懸命に踏ん張っていたような覚えがあるので、
何にしろ下がたくさんいると、
上の子は意地っ張りの強がりに育ってしまうものなのかも。
その結果として、下の子に心配されたり、
最悪オモチャになったりしているのだから、
全くお姉ちゃんお兄ちゃんたちの苦労が偲ばれる、
などと末っ子の身分で思ったりしました。
彩美お姉ちゃん、お姉ちゃんに欲しいなあ。
決して小さい状態に惹かれたわけではなく。

軋人、鶴見さんち、父、彩姉ときて、
次は美智乃かお母さんの話かなと予想。
美智乃だったら大変嬉しい。

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