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2009.06.14 (Sun)

ミミズクと夜の王


ミミズクと夜の王
(2007/2)
紅玉いづき

王であるということは
とても想像が難しい。

でも、もしかしたら
親であること、人であること
誰かの誰かであることと
それは同義なのかもしれないと思う。

【More・・・】

語られていない部分は
その必要がない部分、なんでしょう、きっと。
ミミズクが「村」にきたあたりのことやなんかを
詮索するのは野暮ってもの。
なにしろこれはお伽噺ですから。
伝わるべきことだけ伝われば、それで十分。
そういう類の話として、うまいなあと思う。

この話の中で、純粋な魔物はクロだけ。
ミミズクは人で、夜の王も元は人で、
もちろん王国に住むのは人。
だからこれは、やっぱりお伽噺なんだなあと思います。
桃太郎とか浦島太郎と変わらない。
鬼や竜宮城は出てこないけれど、代わりに魔物と夜の森がある。
そしてそういうモノと同じ地平に当たり前に人がいて、
悲しんだり、虐げたり、愛したり、なんだか忙しそうにしている。
魔術や聖剣なんて自分にはなじみのないものなのに
どこかミミズクの世界に親しみを覚えるのは
そこが小さい頃に頭の中で駆け抜けた場所に、似ているからかもしれない。

ミミズクの過去も夜の王の物語も
そして聖騎士夫妻や、王の父子のあれこれも
違う者が同じ場所に立ったなら、もっと悲惨な話になったんだろうなと思う。
ミミズクはもっと早くに壊れて死んで、
すると夜の王は救われないまま森に一人きり。
アンディがあんな風でなければ、オリエッタに選択肢はなく、
ディアは塔の中で中身まで腐らせていたはず。
ふとするとどうしようもなく救いのない話になりそうなところを、
ミミズクのふやけた笑いや、夜の王の優しさや
アンディのしなやかさ、オリエッタの潔さが押しとどめている。
それだけでなく、めでたしめでたしな結末にたどり着いている。
大げさに言えば、個々の善良さが物語の世界を救っている。
だから、読んでいて気持ちが良いのと同時に
少しだけ、物足りなく感じてしまった。
出来過ぎている気がして。
それはまさに桃太郎と同じなんだけれど。

とはいえ、
ミミズクに魅了されてしまっては
そんなささいなことなどさほど気になりませんでしたが。
ひたすらひどい場所として在る「村」に育ったとは思えないほど、
ミミズクは奇跡的な少女だと思います。
多少妙な具合に湾曲してはいますが
死人を解体することと、生身の人を刺すことの差を感じるなんて
誰ぞに爪の垢を煎じて飲ませたい気分。
夜の森に住まう、ミミズクとフクロウ。
久しぶりに主人公たちの幸福を願いたくなるお話でした。

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