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2011.11.28 (Mon)

放浪息子12巻


放浪息子12
(2011/9/24)
志村貴子

分かれた道は、
遠く隔たってしまうわけじゃない。
まだしばらくの間は、
手を伸ばせば触れられる場所を歩いていけるだろう。

でも、やはり桜舞い散るその日は、
確かな分岐なのだと思う。
静謐の中で繋がった手を、
決して二人が忘れなくても。

【More・・・】

小学生と高校生の間には
たったの三年間しか挟まっていないのに、
時間は一切の容赦なく、子供たちを変える。
小学生から見た高校生が、
はるか遠い大人に見えるように、
高校生から見た小学生もまた、
あんな時代があったのかと疑いたくなるほど、遠い。
その間の三年間を終えて、
それぞれ新しい場所へ行く二鳥くんたちを見ていると、
彼らがまだランドセルをしょっていた頃のことが、
何度もフラッシュバックして仕方なかった。
自分に性別に見合った格好をすることへの違和感は、
今も二鳥くんと高槻さんの中にあるけれど、
それも含めて彼らはこの三年間で確かに変わった。
多分本人たちが自覚している以上に、大きく。
96話の表紙、みんなで並んで笑う彼らを見るのが、
子供を見送る親御さんの気持ちで悲しかった。

中学校最後のイベント、
文化祭でのファッションショーには、
土居が言うまでもなく別れの気配が漂っている。
この時点ではまだ二人の進路がどうなるのか分からない。
でも、二人を表す言葉が「親友」であることや、
何よりニ鳥くんが感じるのが、
高揚や悲しみではなく「静謐」であることが、
この時間の終わりを予感させて苦しい。
恋愛云々が絡んで距離をおいた時期もあったけれど、
二人は同じ痛みに喘ぎながら、
舞台の上でそうしたように、
手と手を取って一緒に歩いてきたんだなあと思う。
高校が別になったからといって、
二人の間にあるものが消えるわけではないし、
それぞれに何かあればどちらもすぐに飛んでくるでしょう。
でも、たとえば日々の中の何気ない言葉に傷ついたことや、
逆に嬉しかったことなんかを、
あの階段の踊り場で話したりすることはもうない。
本人たちがさっぱりとしている分だけ、
なんだか読んでいるこっちが感傷的になってしまうなあ。

新しい制服に身を包んで、
部活を決めたりアルバイトを探したり、
忙しそうにしているのを見ると、
最高学年からまた新入生になったときの違和感とか、
忘れ物をして誰に頼ったらいいのか分からない不安とか、
そういう久しく忘れていた気持ちを思い出した。
ニ鳥くんや更科さんは言わずもがな、
意外と千葉さんやマコちゃんも世慣れしているので、
彼らが新天地のプレッシャーでつぶれてしまう心配は多分ない。
望んだ場所であってもなくても、
それぞれになんとかかんとかやっていけるんだろうなと思う。
高槻さんが晴れて男装して学校へ行けているように、
もう中学の時ほど息苦しい思いもしなくて済むでしょう。
だからと言って、一足飛びに何もかもがうまくいくわけもなく、
新しい不安や不自由さがまたやってくるんだろうな、とか
自分のその頃に比して考えると、
昔より随分たくましくなったとはいえ、
二鳥くんの男子制服姿が不安になってしまった。
もう全員合格にしてあげて、という先生の気持ちがよくわかる。

二鳥くんが存外大胆なのは今に始まったことじゃないけれど、
変わっていく体に怯むことなく、
女装してウエイトレスの面接に行くとは恐れ入る。
一瞬だったけれど真っ赤っかの頭になったし、
この子は本当に気持ちよく外見を裏切ってくれるなあ。
高槻さんに貰った指輪を捨てた方がいいのか、と思う二鳥くんも、
なんで捨てなきゃいけないの?と思うあんなちゃんも、
どちらも同じくらいいい子だと思う、ああ愛しい。
二鳥くんのこともあって刺々しかった千葉さんも、
気がつけば随分と素直に周囲を見られるようになっていて、
まさか本当に教会のあの子と付き合うようになるとは。
思えば長くアタックしてたもんなあ、・・・名前何だっけ。
ささちゃんは髪を下ろして大人っぽくなったし、
白井さんはちーちゃん以外にも目を向けるようになったし、
体や生活だけでなく、それぞれが変化しているのを感じる。
特に女の子たちの変化は著しくて、
あんまり変わっていない岡や土居の背中を叩きたくなった。
まあこれからいくらでも変わっていくんだろうけれど。

確かな決意のこもった二鳥くんの表情と、
「だめって言うよ」というユキさんの表情の対比に、
二鳥くんの苦しさは彼だけのものじゃないんだと思った。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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