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2012.01.31 (Tue)

てのひら怪談2


てのひら怪談2
(2007/12)
加門 七海、 他

怪談をしましょう。

その言葉は場を立ち上げる。
「お話」と「語り手」と全く等しい重さで、
そこでは聞き手も、「怪談」になる。


【More・・・】

景気が良いときほど怪談が流行るらしい。
それが本当だとしたら、その背後にあるのは、
明るいときほど暗い話が望むとか、
そういう深層心理的なものではなく、
もし世の中が落ち込んでいるときに怖い話をしたりしたら、
単にシャレにならないから、ということな気がする。
聞く側に怖がる余裕みたいなものがないと、
怪談はただの悪趣味な話になってしまうのだろうと思う。
一方で、素人が語る牡丹灯籠と、
落語家のそれに雲泥の差があるように、
怪談の質は話者の技量に大いに左右される。
死んだ女といい仲になって別れ損なって殺されました、なんて
言ったところで一つも怖くないし面白くない。
怪談というものは話そのものの筋以上に、
話し手と聞き手両方にある構えを要求する、
つまるところ場の道楽なのだろうなあ、と
百人の話者が語る百の怪しい話を読みながら思った。
短くもよくできた話を怪談にするのに足りなかったのは、
おそらく私の側の構えなのだと思う。

公募で選ばれた短編怪談百篇を集めたシリーズの2。
1は創作といわゆる実話系が半々くらいで、
その割合が丁度良くて大変愉しかったのだけれど、
今回は圧倒的に創作感のある話が多くて、
「怪談」と言えば古典的な話を除いて、
ほぼ現代の実話系をイメージしてしまうので、
怒濤の創作もの押しは少し残念だった。
創作感と言っても、嘘っぽいとかリアリティがないとかではなく、
語り手自体が怪異じみていたり、
視点のおき場所が小説のようになっていたり、
そもそもの形式が違うというだけのこと。
そういう話を実話ものとして読んで、
いやそりゃないだろ、と言うのはお門違いというもの。
たとえ実話ものであっても、
単に「実話」として読むお約束がついているだけのことで、
それに対して、いやいやいや、と突っ込みが入るのは、
よほど語り手の腕が悪いか聞き手が弁えてないかでしょう。
とはいえ本来身近な素人が語り合う百物語の体をとるなら、
「実話系」に寄るのが筋なんじゃないかと思ったりもした。

幻想というか幻覚小説のような体裁の話なら、
「なめり、なめり、」辺りがとても好みだったし、
悪夢を見たあとのように不条理にうへえとするという意味では、
「赤き丸」や「カミソリを踏む」が秀逸だとは思うけれど、
そんなこんなで「怪談」として楽しめた話はとても少なかった。
少ない中でも「アキバ」はあとを引く怖さのある話で、
読み返してみると更に怖くなった。
井戸から次元を越えてこんにちはする彼女の話のように、
聞き手に脅威が感染するタイプの話ではないし、
怪談につきものの死や陰惨さも全く出てこない。
でも、「アキバ」という話は、
聞き手の内部、具体的には記憶を揺るがしてくる。
何の疑いもなく積み上げていた平凡な記憶の中に、
存在してはならないものの存在を挟み込まれるという意味では、
あるいは感染系の話でもあるのかもしれないけれど、
だとしても、それが記憶である以上、
恐怖はもう終わっているはず。なのに、怖い。
それは過去になるという形で、
「それ」がもはや手の届かない場所に、
固定されてしまうからなのかもしれない。
私の中にもしっかりと「アキバ」は根を下ろした。

読まなければ、聞かなければ良かったと思うような、
後味の悪い怖い話も大好物だけれど、
意味が分からないにも関わらず、
確かに何かしらの理屈が働いているのを感じられるような、
そういう変な話にも魅力を感じる。
単純に言えば、オチつきの怖い笑い話で、
今回の中では「乗り物ギライ」と「死霊の盆踊り」がそれだった。
前者では男が乗り物ギライである理由は全く明かされず、
しかもおそらくそこにはしょうもない理由しかない雰囲気で、
怖い要素としては死んだ男がついてくるという点だけれど、
全体を通して感じられるのは、
語り手の死んだ男に対する親愛の情だった。
理由も分からないというのに、
霊柩車に乗せないために家族と一緒に棺をかついだり、
あちら側に渡れていないらしい男を恐ろしく思うよりも、
渡し船だからなあ、と哀れむなんて、男は愛されていたんだなあと思う。
盆踊りの方は怖い状況に対応しようとするやり方が、
いかにも必死で滑稽な話だった一方で、
その何者かが何なのかは全く分からないことを思えば、結構怖い。
しかし映像化したらひたすら面白いと思う。

もしも百物語に参加するなら、
話の有無よりも技量が問題になるな、と改めて思った。



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