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2012.02.14 (Tue)

炎の蜃気楼36 耀変黙示録Ⅶ 濁破の章


炎の蜃気楼36 耀変黙示録Ⅶ 濁破の章
(2002/11/1)
桑原水菜

魔王の野望をくじくため、
死んでいった者たちの仇をとるため、
助けられたことに報いるため。
城を目指す者の胸には、
それぞれ異なる火が燃えている。

ただひたすらに、
魂の声に従い続けるあの男の胸にも。


【More・・・】

四百年前の始まりの場所から、
景虎は随分遠くまで来てしまった。
裏四国を成してしまったとき、
上杉の頭としての立ち位置は、
完全に反転してしまったようにも思えた。
けれど、よく考えれば、
怨みに飲まれて現世に留まる者をあちらに送り、
死を納得できない魂に猶予を与えて、
結局この男はいつも弱い者の側にあった。
怨みを断ち切れない弱さも、
死を受け入れられない弱さも、
他人事ではなく自分のことだと思うからこそ、
景虎は身勝手に生にしがみつく者を断罪し、
同時に、見捨てることもできなかったのだと思う。
たくさん間違い、確かに罪を重ねてきた彼を、
魔王の手から救い出すために集まった人々。
その数、そしてその一人一人の必死さに、
景虎が何をしてきたのか少し分かった気がした。

相手が巨大な動塞だったり、龍が炎を吐いたり、
イージス艦や霊船が大活躍だったりで、
瀬戸内海が大変なことになっているけれども、
今回は大きく見ると城攻めだったんだなあと思う。
思えば現代を舞台に戦っている関係上、
拠点となる「城」をもっている武将はいなかったので、
城を落とす戦闘ももちろんなく、
四国結界を守るために怨嗟玉やら神器やら、
キーアイテム的なものを取り合う構図は今まで通りでも、
攻め手が大がかりな飛び道具を使う一方で、
守り側も落とされないための色々を駆使する盤面は新鮮だった。
ただ、攻め手となる赤鯨衆・現代人組・風魔その他は、
手を組むどころか互いの動きも目的も把握しないまま、
ほぼ好き勝手に安土城に攻撃を仕掛けているので、
城攻めのイロハとか戦略的なものは皆無なんですが。
まあ、精緻な計画を練って挑んだところで、
魔王がまいた種に足元をすくわれるのがオチな気もするので、
むしろ連携せずに思いのままに動いたことが、
結果的には言い方向に働いたのかもしれない。
しかし存外呆気なかったなあ、安土城。

信長を裏切れるかどうかという瀬戸際で、
カオルが揺れているのを見ていて、
信じられているからこそ、
裏切りは裏切りとして成立するのかもしれないと思った。
景虎が大転換を成し、生死の境界を揺らがせたことは、
現世に留まる死者をあるべき場所に送るという、
謙信公が与えた使命にはそぐわない。
だからそれを指して背信だと言う勝長は多分正しい。
景虎が四国に現出させた淡いの空間も、
信長が望み、景虎がときに同調する闘争の世界も、
どちらも世の在り方として正しい気はしないけれど、
でも少なくとも、謙信公は景虎を責めてはいないし、
嘆いてもいないだろうとは思う。
その暗い場所に謙信公はもういないのだから。
教えは夜叉衆の誰の中にも残っているけれど、
彼らはすでに裏切れる相手を失ってしまっている。
千秋や綾子が自分の心に従って行動しているように、
勝長もそう生きられたらいいのにと思う。
そうした結果が景虎との決定的なすれ違いなら、
景虎がまた一歩孤独を深めたことが悲しい。

兵藤、綾子、勝長がお亡くなりになったり、
千秋がまだ一人で頑張って暴れん坊を押さえてたり、
高耶救出隊の有能さが半端なかったり、
清正がシュノーケルつきでやって来たり、
細かく衝撃を受けたり笑ったりしたんですが、
何を置いても小躍りせずにはいられなかったのは、
小太郎ver.蘭丸。もう何この忍のいじらしい万能。
天変地異レベルのエネルギーに飲まれても、
憎き犬っころに蹴散らされても、
どんな姿になっても高耶の元に戻る小太郎が、
銃弾一発程度で足を折るわけもなかったようで、
もはや誰をどう裏切ってるのかも判然としない狂犬より、
よほどこの忠犬の方が高耶のためになっていると思う。
今回の高耶の安土城脱出に際して、
一番の功労者は間違いなくこの男でしょう。
しかもこれだけ役に立っておきながら、
褒めて褒めてと尻尾を振りもしない。
高耶を救いたい思いを押しつけさえしない。
全くどこまで忠犬なんだ小太郎は、応援してる。

眠ってもいないし、そもそも姫でもないけれど、
毒リンゴならぬ種に対抗する手段として、
あれが有効だったのが何より唖然とした。
公衆の面前では、とは彼らは習わなかったんだろう。

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