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2012.04.01 (Sun)

猫物語 黒/白


猫物語 黒
(2010/7/29)
西尾維新

猫の信条は、
気まぐれと裏切りと自由。
軽やかに伸びやかに、
にゃんと鳴く。

尾のない白猫は、
にゃんと鳴いても、猫ではない。


【More・・・】

人であろうとする者は人だと、
軽薄なアロハ野郎は言い、
本物であろうとする偽物は本物より尊いと、
不吉な詐欺師は言った、らしい。
羽川翼という女の子がしてきたことは、
まさにその二つの「であろう」で、
彼らの言葉それぞれを鵜呑みするなら、
彼女は間違いなく普通の人で、
本物より本物らしい偽物たり得たはず。
ただ一点不幸だったのは、
彼女が目指した「普通の人」なんてものの本物は、
どこを探してもいないこと。
「普通の人」になるなんて、普通はできないことで、
それができてしまった時点で、
彼女は本物らしいだけの化け物になったのだと思う。
彼女が普通ではない自分に気づくことが、
特別ではない自分にいつか子供が気づくのと、
同じようなものだったなら、
その意味でだけ、彼女は普通なのかもしれない。

ブラック羽川の登場の一度目と三度目のお話だけれど、
原因は違えどGWと文化祭前のそれは、
猫の性質と対処の仕方において近似していて、
違いは猫自身が言っているように個体差のレベルなので、
阿良々木くんが語る猫の物語の方は、
いまだ語られていない物語ではあっても、
猫についてはそれほど目新しさもなかった。
驚きはむしろ忍と阿良々木くんの関係が、
忍の家出からの二度目の猫退治以前、
一度目の猫退治のときから変化していたこと、
端的に言って、忍がすでに軟化していることで、
声云々は後の物語を前提にしたサービスとしても、
一応やツンデレどころではない、
紛うことなき協力があったことが意外だった。
というか、こういう形で協力して貰っておきながら、
彼女が家出するまであそこまで見当外れでいたとは、
阿良々木くんは8才女児に軽蔑されて当然だと思う。

猫自身が語るという意味でも、
猫だった彼女が語るという意味でも、
白の方が猫物語という名を冠するにふさわしい。
阿良々木くん以外の人間の語りは初めてなので、
大丈夫なものなのか若干冒頭心配になったくらいで、
にゃん、にも慣れてしまえば何ということはない、
むしろやたらと同義語を言い換えることが少ないだけ、
何を言わんとしているのか分かりやすい気さえする。
八九時や二人の妹や神原あたりとの、
高度な掛け合い的会話がないのは寂しいけれど、
その辺はキャラが良い具合に変わった戦場ヶ原さんが、
八九時的かつ神原的に羽川さんと絡んでくれたので、
それほど阿良々木くんがいないことも気にならなかった。
関係の立ち位置から事象を見る人間としても、
戦場ヶ原さんが上手いこと回してくれたし、
もう本当に今回は主人公いらないなあと思っていたので、
最後の最後に登場したときには、
何この人ヒーローぶっているんだろうと冷えた視線を送ってしまった。
一度は猫の原因になった以上、
これくらいの介入は認めるべきか。主人公にひどい。

戦場ヶ原さんが重みという形で手放したものが、
一人歩きをして他者や物に影響を与えるようになった、
というより、そういう形で心を切り捨てたのが羽川さんで、
怪異としての強力さを害意と言い換えられるなら、
多分虎が忍野のようなタイプのプロに見つからなかったのは、
羽川さんと彼女を愛する人間にとって幸いだったのだと思う。
一度目の猫、低級な妖怪でしかない猫のときでさえ、
忍野は場合によっては彼女を殺す気でいたのだから、
妬んだ対象、場所を自動的に燃やす尽くす虎なんて、
試行錯誤ゼロで抹殺されるだろうし、
彼女が切り離しをやめない限り猛獣が生まれ続けるのなら、
おそらく彼女への直接のアプローチも辞さない。
あるいは猫が生まれた時点でそうなった方が、
一度吐き出したものをもう一度口に入れるような、
そんな痛みを経験することもなかったのかもしれないけれど、
阿良々木くんの対処をその場しのぎと断じた以上、
遅かれ早かれ別の猛獣可能性がある生まれることは、
忍野には分かっていたのではないかと思う。
それでも彼女を監視しつつ放置したのは、
その危険性と、彼女のズルや痛みが釣り合ったからなんでしょう。
全くお人好しめ。

次はおそらく戦士度が上がったらしい主人公の、
その過程のお話か。
今さら刀振り回したって少年漫画の主人公はなれないが。

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