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2012.06.05 (Tue)

零崎双識の人間試験


零崎双識の人間試験
(2004/2/5)
西尾維新

鋭利さ、重量、有毒性、技術。
どれも必ずしも必要なものではない。
その目的の前に手段は無限だ。

それさえも持たない「零崎」を、
此岸に留めるものは、
家族と、その敵。それだけ。


【More・・・】

生まれ持った性質をそのまま受け入れて、
あるようにあることは、別段誇ることではない。
そうやって生きられることは、
幸運で美しいことではあるとは思うけれど、
だからと言ってその在り様が正しいというわけではない。
言い換えれば、そういう性質全部を、
曲げて隠して否定して偽って生きることもまた、
誰に責められるものでもないのだと思う。
性質の種類や有無に選択の余地がなくとも、
それに従うかどうか、には意志が介在する余地があり、
押さえつけることができないとしてとも、
人には使ってはいけない最終手段が残っている。
そんな風に思うから、ありのままを誇る人間と、
忌まわしい性質を忌まわしいものを認めながら、
それが本来的であることを理由に開き直る人間、
どちらも同じくらい腹が立つ。
零崎一賊の忌まわしさは殺人鬼であることではなく、
殺す意志も殺さない意志も持たないことなのだと思う。

京都で一大連続殺人をやった人識が、
なぜそのときその場所で殺しを始めたのか、について
鏡像であるらしい戯言遣いの存在や、
土地への因縁みたいなものを想定していたのだけれど、
どうやらそれは全く見当違いだったらしい。
人識はあの事件の最初の一人を皮切りに殺し始めたわけではなく、
犬が棒に当たるよりもはるかにひどい確率で、
関わる者関わる者余すことなく殺して、
そうしながら放浪するタイプ(?)の殺人鬼だったから、
単に一つの事件としてまとまらなかっただけ。
つまり、人識がどこかに留まるということは、
一つの場所で大勢が死ぬことに他ならないわけで、
その辺に人識が放浪する理由があるのかもしれない。
留まろうが留まるまいが結局殺すのだから、
死ぬ人数は多分そう変わらないし、
コミュニティの一部を惨たらしく欠くことと、
コミュニティ全体が殺しつくされること、
どちらがよりマシかは意見が分かれると思うけれど、
少なくとも漂っていれば、留まった分だけ生まれる繋がりを、
殺害という形で自ら引きちぎる苦痛だけは軽減できる。
なんていう身勝手。殺人鬼に言うことではないか。

「一賊」の長兄たる双識という男。
飛びぬけての家族主義、と言うだけあって、
人識や伊織に対する情は半端ではなかった。
でも、家族とは、とか言って一賊の者を守ったり、
最期から考えてかなり人殺しを厭うているくせに、
家族を守るという目的の前では、
殺すことにも殺した相手にも容赦ない感じは、
殺した相手に軽く謝罪を口にする人識よりも、
なんだか歪んでいるような気がした。
多分、双識は家族がいるから生きている、
つまり家族なんかがいるから殺し続けている。
それさえなければ、とっくの昔に死んでいたはずで、
きっとその方がこの人にとっては喜ばしいことだった。
一賊の理念が、仇なす者は皆殺し、だと言うのなら
「零崎一賊」は本来意味をもたない殺人に意味を与え、
殺人鬼な人間を生かすために存在しているのだと思う。
生きろ、と言うことが人の為になるとが限らない。

新しく生まれた零崎、伊織。
人識も双識もそれぞれ特殊な技や物で人を殺すので、
そういうものさえなければ、
殺人衝動はあっても達成数は減るのかと思っていた。
でも伊織を見ていると彼らのもっている才能は、
そういう次元の話ではないことがよく分かる。
凶器になり得るものがあるかないか程度で、
踏み込みの深さや結果が変わったりはしないらしい。
ただのダルい女子高生だった伊織が、
敵の強さや自分の状態と全く無関係に、
殺すための動きをやってのけてしまうのは、
彼女が間違いなく「零崎」であることを証明しているのだけれど、
双識が零崎ではなく無桐に伊織を留めていた家族に対して、
感謝の念を抱くのが本心からのものであったなら、
妹が欲しかったとか言いながら、
彼は本当は家族が増えないことを望んでいたのだと思う。
兄のために、零崎を発揮する伊織は、
兄のために逃げるべきだったのかもしれない。
兄、と思った時点で零崎であることからは逃げられないにしても。

時宮の作った「最強」は、
マンガの知識云々以前に粗すぎる。
最強だって人間だもの、と言いかけて
電車の扉を吹っ飛ばした時点で少し疑った。

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零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)(2004/02/05)西尾 維新商品詳細を見る鋭利さ、重量、有毒性、技術。どれも必ずしも必要なものではない。その目的の前に手段は無限だ。それさえも持たない「零崎」を、此岸に留めるものは、家族と、その敵。それだけ。
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