2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2012.07.26 (Thu)

私のいない高校


私のいない高校
(2011/6/14)
青木淳悟

わずか一年程度の道連れでも
クラスメイトと顔を合わせる時間は、
一日の中でときには家族より長い。

個別の不安や事情を制服の下に隠し、
「教室」という船は日々をゆく。

【More・・・】

分単位で一日の動きが決められていて、
それが月、年と重なっていき、
その間十週に一度程度は成果を試され、
秩序を乱す者は罰せられ排除される。
なんて書くと学舎はひどく殺伐とした、
畜舎か何かの収容所のようだけれど、
もちろん学校はそれだけの場所ではない。
物語の中で頻出する奇抜な謎でできたミステリや、
キラめく青春がさほどありふれていない代わりに、
学校には、教室には、日常がある。
反復につぐ反復が、その強度を上げる。
掃除当番があり、移動教室があり、
担任の遅刻があって、組対抗戦や紛失物騒ぎがある。
学校というものを知っている人間にとっては、
「思い出」として特記するまでもない出来事の積み重ねで、
ほとんどの学生時代は出来ているんだと思う。
留学生というイレギュラーを呑み込んで、
新しい日常をめきめきと形成していく二年菊組。
そうだ、教室とは、こういう場所だった。

共学化や外国人の新校長、科の再編成等々、
学園は大きな変革の最中にあるようだし、
そもそも女子校という場所の空気自体に、
全く馴染みがないにも関わらず、
菊組と留学生を中心にした「学校」の雰囲気だけが、
よく知ったものであるような気もして、
妙に不安な気持ちで読み進めた。
基本的に視点は第三者、神の視点に固定されていて、
わずかに担任の心情が漏れる他は、
誰の内面も表出するもの以外読み取れない。
普通第三者視点で進む物語でも、
場面に応じて人物の内面にズームインしながら進むので、
この、誰の底も簡単には見せない作りが、
まるで本当に菊組で彼らと付き合っているような、
つまりは現実での他者との関係を、
架空の人物との間で構築させられているような感覚になって、
何でもない描写を不穏に見せているのだと思う。
何なんだ一体、と何度も思った。

描かれる期間は四月頭から六月あたりまでで、
二月までいる留学生を追ったわけでも、
一学期として区切ったわけでもない妙な塩梅。
大きな行事としては修学旅行があるだけで、
時間割で運行される一週間の授業、週末、また月曜、という
繰り返し単位が基本でかつ大半なので、
結局何を中心に描きたかったのか分からないのだけれど、
最終数ページに挿入される六月から先の出来事を読むと、
要は留学生という大きな異物を呑み込むために、
学校という集団が変形・変質し、
それ自体を日常として固定化するまでの過程が、
このお話の全部なのかもしれないなと思った。
英語も仏語も充分にできず、
学習以前の障壁の多い留学生に対して、
彼女やクラスメイトに不利益が生じないよう、
額を寄せ合って工夫する先生方がなんだか可愛かった。

約四十人の女子高生を束ねるなんて、
それだけで頭が痛くなりそうなのに、
さらに教科担当と留学生へ個別授業、
諸々の事務手続きに担任業までやっていては、
先生はいつか倒れるような気がする。
まあ土日は比較的家でだらけているようで、
授業とステイ先での行事をこなしながら、
友人と毎週末遊びに出る元気のある留学生の方が、
よほどスタミナというか活力あるなあと思う。
担任は修学旅行先での生徒たちの覇気を嘆いているけれど、
少なくとも彼女にとっては修学旅行は、
他のクラスメイトたちより大きな体験だったのだと思う。
多分、カナダ研修への参加がそうであるように、
教室にナタリーがいることで、
個々も組全体も少なからず影響を受けていて、
その上でのあのリアクションなのだから、
女子高生というものはこういうものと、
担任は諦めた方がいいのかもしれない。

引率者の視点で見る修学旅行は、
なんとも危なっかしくて大変そうだけれど、
こうやって見守られていたのかと思えば感慨があった。

スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


23:48  |  あ行その他  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/447-18d87937

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |