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2012.09.07 (Fri)

ひばりの朝1


ひばりの朝1
(2012/8/8)
ヤマシタトモコ

悪意など持っていなくても、
それは向けられる。
色など知らなくても、
その香りを読み取られる。

人は人を解釈する。
身勝手に、残酷に。


【More・・・】

阿呆極まりない中学生だった頃、
グラマラスという言葉は、
グロテスクと似たような意味だと思っていた。
だから男子連中が一部の女子を、
その言葉で表してニヤニヤしているのを見るのが不愉快だった。
女子にグロテスクなんて悪口以外の何物でもない。
自分の勘違いに気がついて、
むしろ彼ら的には好意的な評価なのだと分かってからは、
可愛いや色気ではなくその言葉を使ってしまう、
男子中学生の心情を考えてほのぼのしたりもしたけれど、
ひばりを見ていると、
やはり女子中学生に向かって性を含めた評価をすること、
特に同年代ではなく大人がそうすることは、
たとえそこに親心や大人の分別があるとしても、
彼女たちにとっては暴力でしかないのだと思った。
実際にどうこうしたりしないし、する気も全くなくても、
君は他の子と違うと示してしまうこと自体が、
自分を受け入れることが難しい年代の子どもを傷つける。
思い出したくもない痛みを思い出して悶えた。

誰もがかつては小学生で中学生で、
それぞれに自分や世界や家族について悩んだはずなのに、
他人にも同じような苦しみがあることや、
その同じような苦しみが決して同じではないことを、
どうしてたった精々十年程度で忘れてしまうのだろうと思う。
ひばりという女の子について周囲の大人が思うことは、
彼女の苦しんでいる部分の核心には全く触れない。
勝手に捉えて解釈して、貶めたり蔑んだりするだけ。
そもそも世界全部を対象にしても余りあるくらいの憎しみを、
一人の女子中学生が抱え込み得るということ自体、
多分彼らには分からないのだと思う。
ひばりの感情に煽られる形で、
自分のことを色々と思い出して苦しくはなったし、
取り出した痛みはまだ痛みとして感じられる気がするけれど、
14才のひばりよりは貴子さんや辻先生の方が、
やはり実感をもってその述懐を聞ける。
私もしっかりとひばりが憎む世界の一部になっている。

ひばりの容貌を自分の事情を映し見る免罪符にしている人間と、
その子どもの部分やただの女の子な部分に気がついていて、
だからと言って何ができるわけでもなく立ち竦んでいる人間、に
ひばりを見ている人間をざっくりと分けるとすると、
前者は完、憲人、富子、後者は勇、辻先生、
どちらかと言うと後者よりなのが美知花、だと思う。
前者の三人はひばりを見ておらず、
後者もただ見えているだけ、という感じなので、
ひばりにとってはどちらも同じなのだろうけれど、
完と憲人に関してはしょうもないとしか言い様がなく、
生まれ直して女子中学生やってみろと言いたくなった一方で、
富子の述懐はひばりのそれとはまた違う部分で、刺さった。
「あたしとは違ういきもの」という言葉は、
異性ではなくむしろ同性に感じることで、
同性だからこそ、その隔たりがどうしようもなく感じる。
あととりあえず「そーだっけ」とか言う男はダメだと思う。

「キミの何を知っていれば」には、
純情無力困惑性欲などなど、
真っ当な男子中学生を感じてぐっときた。
けれど辻先生の「母親まで なぜ」には、
それ以上にああ・・・とかうう・・・とか唸ってしまった。
親子の関係なんて十全であるわけがないと思うけれど、
多分先生は、無関心という言葉で鎧ながら、
親と子の間の最低限の理解を信じたいと思っていたのだと思う。
ひばりの母親を前にしたときの揺らぎは、
自分と母親の関係をベースにしているので、
その点では先生も身勝手な三人と同じ。
それでもひばりの本当に一番近い位置にいるのは先生で、
彼女がこの先どうにか状況を改善できるなら、
先生が端緒になってくれたら大変嬉しい。
でも、多分無理だろうなとも思う。
クラスメイト、親戚、親、と並べれば、
担任教師が踏み込める位置は圧倒的に浅い。
教室内、生徒間で起こっていることでさえ、
先生は無敵の力を行使できるわけではないのだから。
せめてひばりが逃げ込める場所が出来たらいいのに。

ひばりが年相応の子どもであるのと同じように、
美知花もきっとそうなのだと思う。

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