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2012.09.21 (Fri)

ZOKU


ZOKU
(2006/10/12)
森博嗣

意味はないけれども、
少なくとも害意もない。
悪には対抗はするけれども、
善なる意思は置き忘れた。

角突き合わせる二つの組織の狭間、
迷惑を被る市井の某多数。


【More・・・】

悪戯といえば、落とし穴や黒板消し。
もっと大規模なものなら、ドッキリとか。
いずれにしても、されて気持ちのいいものではなく、
された側が「悪戯」として受け取らなければ、
嫌がらせや犯罪になってしまう。
つまり、悪戯を悪戯たらせるのに必要なのは、
仕掛ける側のバランス感覚と、される側の許容。
その意味で、ZOKUの大小のプロジェクトを、
悪戯にしているのはTAIの存在なのだと思う。
やり過ぎは粛正し、しょうもないものも一蹴する。
プロジェクトの計画と実行はZOKU内の会議決定だけれど、
それを評価しているのは明らかにTAIだし、
ZOKUなくしてはTAIも白い暴走機関車でしかない。
双方の関係は善と悪の対立ではなく、
そう見れば、むしろ相互依存なわけで、
結局お前ら仲良いよな、という気分になった。
今日も日本は平和だ。

仕掛ける方も防ぐ方も利のない活動なので、
実害がないとはいえ結局困るのは一般の人々で、
その点では金持ちたちの迷惑な道楽なのだけれど、
なぜだか全く嫌な感じがしないのは、
それが、困る、というレベルの悪戯でしかないことと、
トップも部下も本気だから、からかもしれない。
意味のないことをする、というZOKUの理念は、
仕事をする上でなんともモチベーションを削ぐもので、
手間暇時間お金をかけて意味のないこと仕事なんて、
誰が全力でやるのかと思うけれど、
少なくともロミ・品川は仕事だからではなく、
ZOKUの活動を人生として働いているように見える。
野乃ちゃんや年齢に対抗することが、
燃料の一部にはなっているだろうけれど、
新人たちやトップの決定にやきもきするのは、
創立時の目標だとか、方向性を忘れていないから、
目指すものが確かにあるからだと思う。
「制服」まで着るとか、真面目な人だ。

活動が活動なだけに変に見えるだけで、
一社会人としては至極真っ当な構成員の中にあって、
野乃の立ち位置は中途半端で、
何度かロミと立ち回りを演じる以外に、
一体この子は何をやっているのかと思っていたけれど、
揖斐に対するわくわくとそわそわを見ていると、
そんなことはどうでもいい気分になった。
プレゼントを喜び、約束にときめき、
どうにも近づけない距離を大股で詰めようとする野乃。
語彙が貧相なことを除けば、
頭の回転が早い聡明な子のはずなのに、
揖斐に対するアタックは驚くほどど直球、
幼稚でもあり、女の本能全開でもあり、
揖斐が常識的に対応する分だけ、
野乃が滑稽なことになって、それがまた可愛かった。
だからと言って決して恋に恋する少女ではなく、
状況と自身を判断する冷静さもいい。
いつかは12歳差を飛び越えてもらいたい。

ZOKUが仕掛けた悪戯の中では、
芸術テロ的Episode 2が最も無害で意味不明、
不快感や危険性も限りなく小さい優良悪戯だったと思う。
一方でTAIと野乃にこだわる余り方向性を見失って、
結局意味が行方不明になったEpisode 4は、
プロジェクトとしては完全に失敗ながら、
ロミの公平さ、揖斐と野乃のズレ、
ケンとバーブが陥ったありがちな視野狭窄などなど、
キャラクターそれぞれの個性が見えて、
話全体としては一番楽しかった。
自分に思わぬ大きな幸運があったとき、
それを単純に享受することができず、
背後にきな臭いものを探す警戒心は、
騙されないためには必要なのだろうけれど、
構造予測学の名でもたらされる幸運は、
無駄に踏み込まず受けとっときゃいい種類のもの、
なのに身の丈に合わないと、怪しまずにはいられない。
高橋健司はじめ迷惑を被る人々の小市民っぷりが良い。

どちらかに就職するなら、ZOKUを選ぶ。
寝台列車では暮らせない。

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