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2012.10.13 (Sat)

傾物語


傾物語
(2010/12/25)
西尾維新

一方的に殴られようと、
愛し合おうと、
出会いはすべからく変化をもたらす。

あの少女と笑い合った時間は、
誰の何を変えたのか。


【More・・・】

何も劇的なことなどなくても、
選択肢は日常の中に無数にあって、
その結果として現状がある。
選択が意識的なものかどうかに関係なく、
行ってしまった選択をやり直すことはできず、
選んだ途端に、選ばれなかった選択は失われる。
それが多分真理だし、
たとえ鬼もどきのペアが行ったような世界があろうと、
別ルートなんてものは普通は知ることができないのだから、
結局、本来的に無数の選択の先にある世界は一つなのだろう。
ならば、今回の物語の中での一番の悲劇は、
八九寺生存のルートがあんな世界であることや、
眷属を失った吸血鬼が死に損ねていることではなく、
あの美しい鬼が別ルートを知ってしまったことだと思う。
自分がそれ以外ないと選択したものが、
最良でも唯一無二でもなく、ただの失敗だったこと。
いくつかの分岐を違えさえしなければ、
望むものは手に入ったのだということを、
目の前に見せつけられることは、どれほどの苦しみなのか。
それは希望とも受け取れるのかもしれないけれど、
とてもトランクスのような心持ちにはなれない。

表紙にこれだけババーンと出ておきながら、
いつまでたってもいつもの八九寺が登場せず、
ゾンビ世界を二人が飛び回るようになった段階で、
これはもしや出さない気かと疑っていたら、
本当に最終盤まで出しやがらなかった・・・。
表紙詐欺と言いたくなるけど、
それはそれとしてキャラ崩壊、
もとい色んな表情の忍が見られたのでまあ良しとする。
シリーズ初期の無表情・無言状態も良いけれど、
今の老獪なあほの子という不思議状態も、
傷物中盤までのからりとした感じをベースに、
うまくささくれが削られた雰囲気でとても良いと思う。
今回の話の中心は出会いと交流の影響、
それによって人格と選択に変化を与え合うという話だから、
初期から大きく変わった上にブレ続ける忍のキャラも、
この鬼が正しく人や世界と関わり合って存在している証のようで、
物語的に一貫しないキャラは困りものだけれど、
どこか一方向に凝り固まってしまうよりはよほど嬉しい。
姿が可変なのだから、せめて語尾くらい統一して欲しいけれど。

鬼の選択を中心に考えると、
幽霊八九寺がいるルートといないルートは、
振れ幅の上下くらいに離れているように見えるけれど、
多分その間に、たくさんの中間的なルートがあり、
逆にもっとかけ離れた世界もあったのだと思う。
たとえば、阿良々木くんが猫に殺された上で、
鬼の眷属作りが失敗しない、あるいは狂気に走らない。
たとえば、戦場ヶ原さんと阿良々木くんの関係がもっと進んで、
猫がもっと強力になって、忍とわかり合ったりして、
二人してカップルをいたぶったりとか、なさそうだけど。
全人類がゾンビ化した世界にこう言うのはなんだけれども、
あのルートはきっと最悪のそれではなかった。
阿良々木くんが死んだ時点で、
鬼にとっては悪い方、つまり失敗のルートだったけれど、
最善との隙間を埋めることは、その後でもできたはずだし、
別ルートの成功を知る苦痛を別にすれば、
成功した自分たちに殺して貰えたこと、
それが同時に成功した自分たちを救うことだったのは、
八九寺と二人が出会い損なったりして、
そうならなかったルートよりも救いはあった。
他人の不幸を数えて自分に救いを見出すようなこんな考え方は、
どのルートの鬼も是とはしないと知りつつ、そう思う。

怪異に出会った女の子たちの中で、
状況が打開されるまでの時間が一番長く、
しかも蝸牛以前に、死という圧倒的な断絶によって、
幽霊という怪異になってしまっていることを考えると、
11年の時を遡って何かができるとなったとき、
たとえ結果的に八九寺の死が避けられないとしても、
彼女を助けようと思う阿良々木くんの考え方は、
とても久しぶりに、理解できた気がする。
ここまでシリーズを読んできて、
怪異に囚われていた女の子たちそれぞれについては、
その弱くて卑怯な部分とそういう部分を自覚する強さ、
両方を愛おしく思ってきたのだけれど、
主人公たるこの人のことは、
自己評価が低いこと、献身の方向性と度合い、
重大な決断をするときの逡巡の少なさ、など、
見ようによっては美点のはずのそういう部分が、
どうにも好きになれず、好きなのはトーク術くらい、
という状態だったので、今回は少しほっとした。
シリーズを読み続けていくモチベーション的に。
あと八九寺(幽霊ver.)が消えなくて本当に良かった。

ロリ委員長とかロリ暦のついでに、
ロリ駿河とかロリヶ原も見たかった。
変態性も狂暴性も皆無の幼女でいいから。

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