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2012.12.19 (Wed)

ネコソギラジカル(上) 十三階段


ネコソギラジカル(上) 十三階段 戯言
(2005/2/8)
西尾維新

最強、最悪、殺人鬼。その他多数。
名に冠して呼ばれる別名をもつ者はみな、
それを体現して在る。

名に恥じぬ行いをときに恥じ、
悔いられもしなかった過去を、悔いながら。

【More・・・】

友達が少ない、恋人がいない、
あるいは友達がゼロで恋人がたくさん、でもいい。
それで夜道後ろから刺されたりしない限りは、
人間関係のラベリングは好きにすればいいと思う。
ただそんな風に思っていても、
友達や恋人のような存在を欠いたときに、
情けないような心許ないような気になるのは、
自分を外側から肯定してくれる相手を失った途端に、
不安に飲まれてしまう程度の強さでしか、
自己肯定を完成させられていないからだと思う。
それは友達の少なさとは別の問題として、
甚だ情けないことではあるのだけれど、
多分大体の人はそんなものだろうと思ったりもする。
いーちゃんを見ているとイライラするのは、
本当は肯定して欲しいし、好かれたいのが見え見えのくせに、
「肯定される自分」さえも信じられないほどに、
過去に縛られて、竦んで、自己否定に躍起になって、
傷つけたくないから、他人にラベルを貼るのを厭うて、
結果傷つけて、また自己嫌悪に陥って、というスパイルが、
程度は違えど身に覚えがあるから。
あらゆる欠点をもつだけのことはあるな、いーちゃん。

山奥の研究所での殺戮の夜から一か月ほど。
あの夜の死や喪失について、
登場人物の誰もわかりやすく傷ついてくれないので、
なんだか随分昔の出来事のような気がしてしまうけれど、
いーちゃんが姫ちゃんを失ったこと、
出夢が理澄を失ったことが些細なことであるはずもなく、
全体的に物語の雰囲気が、というより、
単純にいーちゃんの語りが暗くて滅入った。
まあ元々明朗快活な人間でもなかったし、
ハイテンション担当の哀川さんや人識が生死不明でもあるので、
世界の終焉を望む「敵」と相対する、なんて、
らしからぬヒーロー展開とのバランスとして丁度いいのかも。
メイド三姉妹の一人が派遣されてきたり、
唐突に崩子ちゃんがぐいぐいきたり、
みいこさんの恋愛遍歴に、あ、この人ダメな人だと思ったり、
島やら学園やら山奥やらに連れ去られもせず、
日常っぽいことをやっていても、
はっきりといーちゃんに対する害意が表明された以上、
次の瞬間周囲の誰が血だまりに沈んでもおかしくない、という、
読者側の緊張も暗さを増長させているとも思う。
シリーズ通してその手の前科は枚挙に暇がないせい。

呆気なく死に、呆気なく帰ってくるのも、
もはやこのシリーズでは一つの基本なので、
哀川さんが死んだとは欠片も思っていなかったし、
またいいところで参入してくるのだろうと思っていたけれど、
出夢に関しては、多分死んだだろうと思っていただけに、
名刺記載の住所に住み続けてるって何だこの元殺し屋。
半裸の出夢に対するいーちゃんの反応で、
匂宮兄妹の関係に関しての読み違えに気づいた。
何かのレトリックかとも思ったけれど、
いーちゃんだけでなく十三階段の扱いもそうなので、
ヒトクイマジカルを読み直さなければいけない気がしてきた。
でも確か肉体的死の描写があった気がするんだけどなあ。
まあいずれにしろ出夢が妹を失ったことは確かで、
会話の端々に現れる不安定さを見た後だと、
明らかに危険そうな学園になんか来ずに、
大人しく隠居しておいて欲しくなる。
戦闘能力的には急拵えの十三階段など相手にならなくても、
殺人鬼とは違う形で戯言遣いと対をなす「敵」と相対するには、
出夢の不安定さは命取りになってしまう予感がする。
とりあえず上巻は生き残って安心した。

「敵」との対面やいーちゃん、哀川さんの過去の話は、
この後の展開を期待しておくことにして、
やはりどうにも絶賛瀕死中のみいこさんが気になって仕方がない。
いーちゃんに返事をするみいこさんの言葉は、
告白されてからそこまでの時間で、
自分のことと相手のこと、気持ちではなく互いの性質を、
本当によく考えて出した結論のように思った。
これだけ真剣に考えてもらえたなら、
それだけで告白した側からしたら充分な答えだろうと思う一方で、
女々しく食い下がるいーちゃんも正しい気がする。
今のままでは付き合えないのなら、自ら変わろうと思うのは、
好かれるための努力、なんていう、
この男からはるかに遠い場所にある決意な気がするのに、
おずおずという感じでもその努力を始めさせるなんて、
みいこさんの引力たるやすごいものがある。
だからこそ、崩子ちゃんや玖渚に対する態度は、
抱えきれない好意から目を逸らす卑怯者のそれに見える。
巫女子ちゃんと姫ちゃんの件で散々なことをしたくせに、
まだ同じことを続けるのか、と思う。
それでまた悲惨なことになったりしたら、
いーちゃんはが主人公を降りる形で物語を終えてもらおう。

哀川さんの過去の明確な殺人発言で、
いーちゃんは若干怯んだようだけれど、
門扉を破壊するスピードで人を車で撥ね飛ばしたら、
それは確実に殺人だと思う。

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